美しい絵巻物のような残酷な世界の中で紡がれる「生」と「死」の物語

犠妃という「妃」を使用した特殊な言葉が出てきますが、愛され後宮ものではありません。説明書きに記載されているとおりです。
生贄として食べられることを受け入れた少女が、死ぬ前に何を考え、何を思ったのか。それが心地好く美しい文体で綴られていきます。

淡々とした乾いた視点の中で描かれる、いきもののいのちをうばって、たべるということ。人間が家畜に対して行うのとおなじように、上位存在がいるのだとしたら……その肉を喰らうことは罪悪でも残酷な事でもないのかもしれない。
そんなふうに思ってしまうくらい、読み進めていくほどに少女の感覚と同期して物語に没入し、耽溺していました。すっかり虜です。
牛を屠る場面では、少女の身体もおなじように切り刻まれてしまうのか、と想像してしまい背筋がぞっとしました。これからも読み進めていきたいです。紙の本で読んでみたいと心から願っています。

(※1章までの感想です)

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