絢爛豪華で美しい爽やかな心の毒を食する物語

国破れて山河あり、という漢詩の一節を呼び覚ます美しくも切ない食を巡る物語で、読み進めるうち、薄幸のいずれも劣らずのとびきりの美少女達を巡る切ない運命の流転に思わず涙してしまいます。

どんな何があっても故郷の自然は雄大で変わらず、裏切らない、哀切な透明感がどのパートも絵画の如くに耀きます。

残酷で強烈、但しここに作者様の巧みな仕掛けが有ります。

食して総てを支配する筈の側が本当に絶対悪なのか?な少女達を取り囲む環境。

偽善だったりタチの悪い罪悪感を消す為だけの言い訳、或いは保身の為のしょうもない嘘が陽炎のように透け、もしくは過酷すぎる亡国の悲劇がバックグラウンドにあったりで。


そんな誰しも心の中に隠し持つであろう澱のような闇も光輪も炙り出し、それぞれの美少女達は自身の命の終焉の前夜、とある見事なクライマックスを迎えます。

この終局に用意された宴場面での国際色豊かな宴席料理の数々、作者様の麗しく華麗な筆致が読む者の目を潤し艶やかに奪います。

そしてまたこれは、偶然の産物で決して意図しての笑いどころではないかもですが

物語に登場する腕の立つ料理人、少女達を都に運ぶ美青年

きっと親戚筋にヒソヒソ……
「あの人とは付き合っちゃ駄目」
「お役目とは言え屑、ろくなもんじゃ無い」

とかとか表面上は美辞麗句で飾り立てて、けど裏で絶対色々言われてるんだろなぁ〜と美少女らの本音、ヒミツの心の声を通し推察出来てしまいちょっと笑えます

よもや自分よりも下に見てるッポイ食材であるか弱き彼女らに、彼等があんなにも鋭く、それは厳しくジャッジされてるとは1ミリグラムすら思うまい。

ザマァであります♪


悪とは何か?心の醜さとはどういう事か?

そして人を愛するとは命の尊い輝きである事

人間を取り巻く森羅万象の偉大さよ


皆皆様、光輝く読む玉手箱をその手で開いてみませんか?

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