後談

○○の部屋の電気は消えていました。恐る恐るドアノブをひねると軋む音とともに扉が開きました。中に人の気配はなく、彼はまだ帰ってきてはいないようです。気晴らしに散歩をしているのでしょうか。それとも行き違いになって今頃私のアパートのあたりにいるのでしょうか。返信のないメールに自ら続けてメッセージを送ると机の上が光るとともに聴き慣れた着信音が鳴りました。どうやら一度帰ってきたようですが、携帯も持たずに外出したようです。それならすぐに帰ってくるでしょう。ここで待つことにしました。いつも座っている私の定位置に腰を掛けます。彼のいない彼の部屋にいるのは少しやましい気持ちになります。

彼はいつ帰ってくるのでしょう。窓から一定のリズムで入ってくる救急車の光が部屋を点滅させていました。

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彼岸小路 河崎 @be_punk

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