第17話 嵐は突然に
「あー……、今日はなんだよ。本当に」
部屋へと帰ってきた雨霧はベットに倒れこみ、唸り声をあげる。雪宮からは告白をされて、出雲からは晴明を狙っている宣言。あまりの衝撃に心が暴れている。友達のままでいいと思っていたのに、奪われる可能性があると思うと自分のものにしてしまいたい。だけど、フラれるのが怖いから告白することも出来ない。弱虫な自分が嫌で目に涙が溜まっていく。
「こんなことなら恋なんてしなきゃよかった」
ぽつりと呟かれた独り言が心に染みわたり、切なくなってくる。恋をしてから楽しいこともあるけれど、苦しいことの方が多い気がする。チョコレートの苦い部分を抽出されたみたいだ。
晴明への想いを捨てられたらいいのだけど、日に日に増していく想いを捨てるにはまだ勇気が足りない。自分は出雲みたいに可愛くないし、雪宮みたいにかっこいいわけじゃない。晴明を引き留めているのは、出雲にフラれ居場所をなくした哀れさだけだ。どうしようもないジレンマに唇をキュッと噛み締めた後、布団の中で丸くなり、夢でありますようにと願いながら眠りについた。
いつもよりも早く起きた朝。爽やかな鳥の鳴き声さえ煩わしさを感じることから、昨日のことは夢じゃないと知らされる。鈍く痛む頭から、浅い睡眠だったのだと分かってしまう。
朝ごはんを作らなきゃと雨霧は布団から出ていき支度をし始める。手慣れ始めた作業に晴明との時間の長さを感じられた。楽しいはずの朝ごはんなはずなのに頭がぼーっとして動かない。漸く作れた頃にはため息を吐いて椅子に座り込んでいた。
「ただいま帰りました」
「おかえり」
「雨霧さんいつもより顔が赤いですよ」
「そう、かな?」
帰宅した晴明はいつもなら元気に迎え入れてくれるはずの雨霧の声が弱弱しいのに気が付いた。リビングへと向かうといつもより赤い顔にピンときて、雨霧の額に手を重ねる。
「熱ですね。こんな状態で朝ごはん作るの大変だったでしょう。今日は寝てください」
最初は晴明が寝れなくなるんじゃないかと思ったが、そもそも熱を移す方が迷惑になるんじゃないかと思い至り、大人しく寝室へと雨霧は向かった。朝ごはんに関しては移す可能性があるので申し訳ないが捨てて構わないと言っておいた。せっかくの食材を無駄にしてしまった罪悪感と身体の気だるさが雨霧を襲い、いつの間にか眠りにつくこととなる。
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