第14話 嵐は突然に

 人肌恋しい独りぼっちの夜を過ごして、晴明が帰ってくる朝が訪れた。最近は朝ごはんは雨霧が作るようになっていた。これは雨霧から提案したことであり、少しでも晴明の負担を軽くしたいのと、話す時間を増やしたかったからだ。


 最初は早起き自体苦手だし、料理もそんなにしたことがなく、スマホで調べる日々。それでも、好きな人に作る料理は楽しかったので、苦にはならなかった。朝ごはんを作り終えたと同時にガチャリと鍵が開く音に帰ってきたのだと知らせる。


「おかえり晴明」


「ただいま帰りました。今日も美味しそうな匂いがしますね」


「今日はアボカドとベーコンのオープンサンドと、キノコの豆乳スープと、コールスローにしたよ」


「わぁ、すごく美味しそうです。食べるのが楽しみですよ」


 晴明の嬉しそうな笑みを浮かべてくれると、雨霧も嬉しくなる。晴明は手を洗いリビングへと向かうと、作られた料理の数々にお腹がすいてくる。提供することが多くても、提供されることは少ないので雨霧の朝ごはんは一日の楽しみとなっていた。


「そういえば、昨日散歩に行っていい喫茶店を見つけたんだ」


「そうなんですか?よかったじゃないですか」


「うん。で、雪宮っていう人と出会ったんだ」


「雪宮?」


「うん、医療器具関係の営業をしているんだって」


「……もしかして雪宮 春と言いません?」


「えっ? よく分かったね」


「彼とは腐れ縁なんですよ。そうですか。雪宮さんとですか」


 雨霧は言い当てられるとは思わず驚きで目を見開いた。それに対して晴明は雪宮に対していい感情がないのか渋い顔をしている。あんなにも話しやすく優し気な雰囲気なのに、腐れ縁だという辺り何かがあるのかもしれない。ライン交換してるなんて言えば、心配されるかもしれない。雨霧はライン交換に関しては言わないことにした。


「雪宮と付き合うことは雨霧さんの自由なので、何も言いませんが気を付けてください」


「なんで?」


「彼遊び人なんですよ。男女問わず食べてます」


「見た目からには想像できないな……」


「見せないようにしてるだけですよ」


棘のある言い方に仲良くはないんだなと思いながら雨霧は確信した。晴明の前では雪宮の話はしないようにしようと心に決めた。それからは何事もなかったかのように朝ごはんを食べ、楽しく話して晴明は眠りにつき、雨霧は片づけをしているとラインの着信が聞こえてきた。

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