第82話 最終話

 アネモネはミントのダンジョンの地下九階の不死王の封印跡にいた。


「ここで前世の私は死んだのよ。私の前世の記憶を守るために、愛する人に殺されたの」


 俺は黙ってアネモネの話を聞くことにした。


「私にとっては、前世の記憶って、そんなに大切じゃなかったのよ。彼との記憶の方が大切だったの。彼と少しでも長くいたいと思ったのに、彼の自分勝手な思いで、私は私の大切な最後の時間を彼に奪われたわ」


 アネモネは当時を思い出すかのように、ピラミッドの中を見回している。


「ボーン、あなたには何が大切か分かる?」


「分かるさ」


「半年も私を放っておいて?」


「分かっていても、上手く出来ないときもあるんだ。未熟だからな。だが、俺は上手くできるまで何度でもやり直すぞ」


「いつまでも未熟は嫌よ」


「これから千年、万年とあるんだ。未熟な期間は一瞬だ」


「分かったわ。ボーン、あなたを好きになってあげる」


 うぉぉぉぉおおお! やったぜっ。


 俺は拳を上げて渾身のガッツポーズを取った。


「ボーン、格好悪い……」


「お、おう。今のはナシだ。まずはレグナを返してくれ」


「あそこにあるわよ」


 見ると不死王から貰った棺桶が三つ置いてあった。


「騎士が返してくれたんだな。えっと、どこに入っているのかな」


 すると、アネモネが真ん中の棺桶を開けて、何とレグナのいる棺桶の中に添い寝するように入って行くではないか。


 マジかよ。こんな誘い方ありますかっ!


 俺はエリザを素早く格納に放り込み、棺桶の中のレグナにジャンピング憑依した。アネモネの体温と吐息を感じる。


 俺とアネモネは唇を重ねた。


「あ、失礼しました……」


 ふ、不死王、貴様、何で今、この瞬間に帰って来るんだよっ。


「いや、そんなに睨まれましても。人の家でそんなことしようとしているボーンさんたちの方がおかしいでしょう」


「ちっ」


「ちって。私としても、居ても立っても居られないです。こんな雰囲気作らないでくれます?」


 ここからこの雰囲気をどうやって立て直すんだよ。


 すると、アネモネが棺桶の蓋を閉めて、再び唇を重ねてきた。


 ……


『アネモネを「勇者の伴侶」にしました。おめでとうございます。末長く幸せに』


 終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな もぐすけ @mogusuke22

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ