第15話 プレゼント
今日は社交会三回目である。
この日までに襲撃はない。
もしかしたら、目的は闇の宝玉だったかもしない。
だとしたらいつ仕掛けてくるかわからないな。
大人しかったのは自分がレベリングしていたからか?
俺は北の森で今はレベリングをしていて、そこは適性が最大80レべだ。
そこまであげる間は狩場とするが、そこでは見ていない。
一体奴は何を考えているんだろうかと物思いに耽りながら馬車の揺れに身を任せる。
王城が見えてきた。
今日は王城でプレゼント大作戦を行う。
馬車から降りると異様な視線を感じる。
なんだ? 恐怖? 畏怖?
周りを見渡すといつもの面子だ。
しかし、誰かがいない?
俺の脳裏に一人の人物が頭を過ぎる。
嘘だろ? 何も報告は来てないぞ?
「アルス! ダクアはどうした? 俺にはなにも報告が来ていないんだ」
「そうなのか。ダクア殿は残念だったな。何者かに殺されたようだぞ。コーザ殿のこともあるだろう? それでみんな戦々恐々としていたんだ」
俺の頭の中は真っ白になった。
周りを見渡すと無意識のうちにハクトを探していた。
そして、見つけた。
「ハクトォォォォ! キッサァアァマァァ! 俺を狙えと言っただろうがぁぁ!」
「俺の知ったことか! なぜ俺に言う? 俺がやったという証拠はあるのか?」
「この期に及んで証拠だと?」
この場で切り捨ててやろうかと思い。ダメだと冷静を装う。
こちらが後手に回っている。
あんだけ挑発したのにこちら以外に手を出したという事は、狙いが俺だけではないということだ。
考えるんだ。なぜダクアも狙われた?
俺も狙われたんだ。でも返り討ちにした。
もしかして襲ってきたのは自分を襲ってきたから他の奴らには手を出してないと安心させるため?
暢気にプレゼントを選び楽しんでいた訳だ。
心の中でため息を吐く。
愚かなのは自分じゃないか。
あんだけ挑発していてダクアを守ればいいと思っていたのに、こっちを襲ってきて挑発まですれば他の奴には危害が加わらないと思っていた自分の落ち度だ。
自分に腹が立つ。奴にのせられているんだろう。
奴の方が上手だという事だ。
「いや、ないな。失礼した」
「あ、あぁ」
突然身を引いたことに驚いたのだろう。目を見張りながらこちらをみて頷いている。
冷静になれ。最初の予定はそういう予定だった。
だから問題はないはずだ。
そのままエマ様の元へと歩を進めた。
目を伏せて少し悲しそうなその御姿を見るとこちらも悲しい気持ちになってきてしまう。
「エマ様。これを受けとって貰えませんか?」
「オルト様。これ以上私達に係るとロクな目に合いません。関わらない方がいい」
「いえ。これだけは受け取って欲しいのです。御身をお守りいたすお守りです」
差し出した布袋を開けて取り出すと笑顔になった。
その御顔には夕日の光が髪飾りに反射し、紫色に御顔を彩った。
「エマ様にお似合いの物と思いまして、選びました。どうかお納めください」
「有難う御座います。この髪飾り。私好みです。嬉しい」
「それならばよかった。それでご相談なのですが……」
「なんでしょう?」
コテンと首を傾けて質問する御姿に胸がキュンとする。
こんなに可愛らしい人を独り占めしようとしている奴がいる。
憤りを感じながらも言葉を紡ぐ。
「マーニー様とアルス殿の御二方とこの後、お茶会を開きませんか?」
「マーニーと? いいですけど、オルト様、大丈夫ですか?」
「私は屈しませんよ。大丈夫です。あなた方が狙われないのなら安心だ」
俺はそう言い残してエマ様の元を立ち去った。
少し遠のいて見ていると七大美麗には挨拶へは行くが長く話しているご令息はいない。
みんな自分の命が危ないと思っているのだろう。
しかし、疑問が残る。なぜにコーザとダクアだけなのか。
他にも話し掛けていたご令息はいたはずだ。
それがなぜ?
やはり中ボス、ラスボスとして脅威だったからか?
そう考えれば合点がいくが、それならばもっと執拗にオルト・ダークネスを攻めればいい。
それともなにか? 俺なら簡単に殺せるとそう思っているのか。
だとしたらなぜ簡単に殺せる。
簡単に殺せるとすれば屋敷の中だな。
あそこではほぼ無防備に近い。
それはそれで妙だ。すぐに殺せるなら生かして置く必要などないだろう。
なぜ生かしているのだろうか。
別に目的がある。ということだろうか。
例えば。そうだなぁ。ハクトを殺させる為とか。
もしかして俺を監視している奴がいる?
「オルト殿、大丈夫ですか? 顔色がすぐれませんよ?」
声を掛けてくれたのはアルスであった。思慮の海に沈んでいたようだ。浮上させてくれてよかった。
「あぁ。大丈夫だ。すまんな。アルス殿、このあとエマ様とマーニー様とお茶会でもどうかな?」
少し考えた末に了承してくれた。
アルスとか令嬢からも情報を収集しよう。
そして仲良くなれるなら一石二鳥だ。
「オルト殿、エマには何をあげたのですか?」
「あれは髪飾りだ。マーニ―様にエマ様はアクセサリとか洋服に興味があるとのことだったものでね」
「それは喜んだでしょう。昔から好きですからね」
「そうだといいのだが」
話していると入口から王子が入ってくる所だった。
こちらも眉をハの字にして落ち込んでいるようであった。
三回目の社交会も悲しい始まりになった。
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