ギャルゲーの裏ボスに転生!?~邪魔者は誰もいない!推しを攻略しよう!~

ゆる弥

第1話 ギャルゲー異世界?

 目を開けると知らない天井だった。


 たしか俺は異世界系ギャルゲー 令嬢恋愛物語(ドーター・ロマンス・ストーリー)通称ドタ恋の六回目のルート攻略をし終わった後だったはずだ。あと一人の一番の推しで全ルートクリアだったんだが、力尽きて寝てしまったと思ったんだが。


 ────コンコンッ


「……はぁい?」


「オルト様おはようございます。朝食のご用意ができましたが、こちらで召し上がりますか? 食堂で召し上がりますか?」


 オルト? オルトって言ったか? たしか、ドタ恋の裏ボスだよな? 二週目以降にしか出てこない裏ボスがオルト・ダークネスだったはずだ。


 ドタ恋の世界に来ちゃったのか俺!?

 マジかよ。

 ヤバい嬉しい。


「えーっと、食堂に行ってみんなと食べてもいいのかな?」


 メイドは目をパチパチとさせている。

 俺が変な事言ったかなと心配になる。


「あのー。ダメでした?」


「い、いえ! それでは、準備のお手伝いをします!」


「あー、大丈夫です。自分で準備します」


 急にメイドが震え出す。

 一体何したんだ?


「く、首を……斬られるんですか?」


「えっ!? なんで? なんでそうなる?」


「死ぬのは……嫌です……」


 急に崩れ落ちて泣き出した。


「ちょっ……待って? 死なせないよ?」


「えっ? 頭打ちました?」


「打ってないよ。失礼じゃない? まともです!」


 目を見開いて口も開けているメイド。


「じゃあさ、着替えどこにあるか教えてくれない?」


「やっぱり記憶障害?」


「んー。みたいなものかな? ちょっと俺も状況を飲み込めてなくて……」


 なにやら眉間に皺を寄せてこちらを見るメイド。


「このクローゼットが着替えです」


「でか!」


 広い壁一点がクローゼットになっていたことに驚いた。

 そうか。たしかオルトは公爵だ。ほぼ王族と言っても過言ではない。そして、か弱いくせに頭が回るからクソ理詰めするタイプのキャラだったはず。


 そんなことを考えながら何故この世界に来たのかも考えている。そして、今の状況を整理している。


「ホントに大丈夫ですか?」


「あぁ。問題ないぞ。適当に着るか」


 クローゼットからTシャツと黒いパンツをはく。それをずっと見るメイド。どういう気持ちで見ているのか不思議に思っていると。


「普通に着替えましたね? 裸を見せつけたりせずに……」


「えっ? うん。飯行こう?」


「は、はい! 案内します!」


 メイドは俺を案内して食堂へと案内してくれる。そんなにコイツ酷いやつだったんだな。さっきの感じで首を斬られて殺してたってことか。人の命なんだと思ってんだよ。


 食堂に行くと誰もいない。


「誰もいないの?」


「は、はい! あのー、申し上げにくいのですが、いつもオルト様は部屋で食べますので、皆様も自然とそうなりまして。すみません! 最初から部屋でと言えばよかったです!」


 緊張して損してしまったな。ただ、裏ボスの親の顔なんて知らないから見てみたいなと思っただけだからいいけどさ。


「いや、いいよ。食べよう?」


「はい!」


 料理が運ばれてきて食べる。マナーとかわかんないからなぁ。怒んないで欲しいなぁと思いながら食べる。


「あっ、美味しい」


「本当でございますか!?」


「えっ!? うん。美味しいよ?」


「嬉しゅう御座います! グスッ……」


 メイドが泣き始めた。


「いつもマズいと暴れ回っておりましたので……」


 そんな酷いやつだったのかよ。

 オルトだとすると、たしか当主じゃないからゲームの舞台となる社交会には参加出来ないんだよな?


「あぁ。ごめんね? これからは暴れないと思うから。あっ、そうだ。社交会って俺は参加できるんだっけ?」


「えっ!? そう……ですね。ダークネス家はエルト様が当主ですので、当主のみ参加していますが、別にオルト様も出れないことはないと思います」


 メイドがそういうんだから大丈夫なんだろうな。俺が参加できないと意味ないからなぁ。そうか。今がゲームの舞台となる時期かを調べないとな。


「あのさ、シーライズ伯爵家のハクト居るでしょ? 社交会っていつでるの?」


「はい! ハクト様ですね」


 このハクトは実はドタ恋の主人公なのだ。それで、このゲームは二十歳が成人で、社交会で婚約者を探すゲームなのだ。


 だから、ハクトの歳でゲーム開始まであと何年かがわかる。


「お噂には出ています。なんでも社交会まであと一年あるんですが、すでにレベル上げに励んでいるとか」


 なるほど。今が十九で一年後がゲームの開始の時だな。オーケー。俺はこの一年は東の森でレベリングだ。物足りなかったら南の森まで進出するぞ。


「そうか。じゃあさ、今年の貴族武闘大会でさ、エルトよりいい成績を残せばいいんだよね? そしたら当主になれるよね?」


 メイドに聞くのはどうかと思ったが、聞く人が他に居ないのだから仕方がないだろう。


「えぇっ!? と、当主に興味がおありですか?」


 口に手を当てて、まぁ驚いたといった感じでこちらを見ている。そんなにオルトは当主になりたくなかったんだろうか。


「うん。まぁ、社交会出たいから。俺って出たくないって言ってた?」


「この前まではそうです。面倒だと」


 なんということでしょう。

 積極的に出たいです。

 まぁ、来年からだね。

 一年鍛錬だ。

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