第12話 婚約宣言
コーザが殺された事実を頭の中で反芻する。
処理するまで少しの時間を要した。
「そうなんだな。物騒だなぁ。あっ、ちょっと俺はハクト殿と話してくる」
「あっ、はい。どうぞ」
エマがあっさりと俺の離席を許してくれたことに少し心を暗くしながら。ハクトの元へと向かう。
ダクアを押し退けてハクトがララに話し掛けている所であった。俺は静かに歩み寄り話しかける。
「ハクト殿はララ様が狙いなのですかな?」
「そうだ! オルト様も邪魔するなら容赦はしないですぞ?」
俺の頬がピクリと動く。
「それはどういうことですか? 脅迫するということですか?」
「さぁな? コーザだっけ? アイツはルールーにちょっかい出したから死んだんじゃないか? 誰がやったかなんて知らないけどな」
コイツ。なんて事を言いやがるんだ。
ダクアは歯を食いしばって震えていた。
「どのご令嬢に手を出しても死ぬと?」
「さぁな。それは知らないが、俺は七大美麗全てを手に入れることを目標としている。誰がいいというよりは、みんな手に入れる! 俺にはそれができる!」
力強く宣言した。
その宣言には七大美麗、本人達も眼をパチパチとしてなにか不思議なものを見るように眺めている。
コイツはそれをできる力が自分にはあると言っている。
「ならば、宣言させてもらう! 俺、オルト・ダークネスはエマ・ハーマイン様と婚約したく思っております!」
俺はそう高らかに宣言した。
エマさまは目を丸くして口を開けていた。
可愛い顔が更に可愛くなっている。
アルスはニヤリと笑ってこちらの宣言を面白そうに見つめている。
「そ、それはオルト様が誰かに狙われるということですぞ!? そんなこと宣言して大丈夫なのですか!?」
「そうですな。そういうことになります。これでコーザ殿を狙った者が私の所にくれば私は戦います!」
そう宣言をしてアルスの元へと戻ろうとすると人が割れるように通り道を空ける。
仕方がないので、エマ様の所へ行き跪く。
「勝手に宣言したことで驚かせてしまい、申し訳ありません。私は、エマ様と婚約したく思っておりますのは、本当です。その事は、事実として受け止めておいて頂きたい」
「はい。ちょっといきなりで驚いてしまいましたぁ」
顔を赤くして少し困ったように笑いながらそう言った。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。ただ、今の所エマ様の中で私はまだ笑顔で対応して頂ける立場にある。ということは、可能性としてはある。と受け止めてよろしいのでしょうか?」
その問いにしばらく沈黙が続く。
頬を両手で挟み顔を赤くしている。
「……こんなにストレートに好意を向けられたのは初めてです。嬉しい気持ちでいます。ですので、これからも仲良くして頂ければと思います。そ、そのっ! すぐにこ、婚約というのは。ちょ、ちょっとまだわからないですが」
アタフタと可愛らしい動きをして慌てている。
それを笑顔で見つめながら答える。
「もちろんでございます。すぐに判断することはしなくて大丈夫です。まだ社交会はあと三回あります。必ず生きて、エマ様の前に現れることを誓います」
すると少し下を俯いて上目遣いでこちらを見つめる。
「本当に、あと三回、生きて、私の目の前に現れてくださいね?」
「はい! 必ず!」
そう俺がいうとエマ様は目に力を宿して頷いた。
必ず生きろとそう言われている気がした。
その時入口が騒がしくなった。
王子様がやってきたのだ。俺が注目されていた状況を不思議な目で見ながら近づいてきた。
耳元に顔を寄せると。
「コーザ殿の話を聞いたか?」
「聞きました。奴は七大美麗全てを手に入れるつもりです。だから私が宣言しました。エマ様と婚約するつもりだと」
そう王子さまに告げ、ハクトに目を向ける。
歯を食いしばって床を蹴りながらこちらを睨み付けていた。
下っ端の暗殺者達はこの社交会には参加できないはずだ。
今すぐにでも襲いに来たいのだろうが、それは敵わないはずだ。
ここからが俺達との戦いになるだろう。
こっちは万全の態勢で迎え撃つ。
「大丈夫なのか?」
「私に目が向けば王子さまからも目が逸れるはずです。一石二鳥です」
何を話しているか悟られないように真っすぐを向いて極力口を動かさないように話す。
「すまないな」
「いえ。レベリングしていたのが役に立ってよかったですよ。まだまだこれからもレベルを上げます」
「期待しているぞ」
「私には勿体ないお言葉です」
少し頭を下げるようにすると王子さまは俺の方をポンポンと叩いてセイレーン様の方へ歩みを進めた。
俺は再びハクトの元へと近づく。
「そうだ。ハクト殿に言っておきたかったのです」
「な、なんだよ!?」
近づいて耳元に顔を寄せる。
「狙うなら俺だけを狙え。それもできない臆病者ならこの場に二度と、出てくるな。わかったか?」
ゆっくりと離れると歯を食いしばり顔を赤くして震えている。と思ったら外に駆けて行った。
すぐにでも俺の事を殺す算段を立てるのだろう。
ダクアが眉をハの字にして近付いてきた。
「オルト様、大丈夫なのですか?」
「あぁ。任せろ。おれはやられない」
そう宣言して王城を後にしたのであった。
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