第3話 楽しくなってきた
当主になった俺は自由に過ごせるようになった。メイドや執事からの評判もいいし、いいことばかりだ。
そんな中、今はレベルが15。そろそろ次の狩場に移動することにする。
「今日は南に行ってくる。まあ、夜には戻ると思うから」
「オルト様、これをお持ちください。いつも何も持っていないではありませんか!」
そう言って包みを出してきたのは最近何かと俺を気にかけてくれるメイドのサリアだ。
「適当に狩った獲物食ってるからさ。あっ! でも、今日の狩場はそれ無理かも。あそこ硬いやつしかいないから」
「行ったことがおありなんですか? まぁ、いいです。これ持っていってください!」
包まれていたのは肉が挟まれたパンであった。すごく美味しそうな香ばしい匂いとパンの甘い香りがする。
「ありがとう!」
こうしてレベル上げに励んでいた俺は同時にハクトのことも探らせていた。
オルトに従っていた部下みたいなやつに探らせていたのだが、何やらこちらのことも調べられているらしい。
ハクトはレベルを上げながらこちらの部下で子爵のコーザ・ボッコボと伯爵のダクア・ツケータブの事を探っているようだ。
俺の事は闘技大会で知ってるはずだ。
でも、俺の事を直接調べてこないってことは、奴は全クリを一パターンしか経験していないってことだ。
裏ボスの俺の事を知らない。だけど、中ボスとラスボスの二人は知ってる。ということはそういうことだろう。
それならば、やりようはある。他のキャラがこっちにちょっかい出してこないってことは、ハクトだけを警戒すればいいかもしれない。
一パターンしか知らないってことは、恐らくだが一番攻略しやすい令嬢にいってるはず。
脳内データでは
ララ・ダンブール子爵令嬢(難易度:C)
(金髪の巻き髪。THE、お嬢様。所作が美しい。少し伏し目がちな目が魅力的。ボンキュッボン)
レベル40以上で落とせる。
特徴としてよいしょしてくれる人が好き。
恐らく最初の一パターンはこの令嬢だろう。それがドタ恋のセオリーだ。
ドタ恋は七大美麗といわれる七人の令嬢を取り合うギャルゲーなのだ。
もちろん一番落としやすい令嬢は存在するが、このゲームでそんな安牌を選ぶものはそうそういないだろう。
なぜなら、つまらないからだ。五回ある社交会を一回でほぼ落とせる令嬢がいる。そんな令嬢を選ぶ様ではこのゲームは楽しめない。
俺は全ルートを攻略したいから落としただけ。思った通りつまらなかったのを覚えている。
あの令嬢を落としたってことはこっちの推しの落とし方は検討もついていないはず。ゲームと同じ令嬢を落としに行くのなら俺は目を瞑ろう。
「オルト様? どうなされました?」
「あぁ。すまん。それでなんだっけ?」
「はっ! それが、ハクト伯爵は近頃メイドに手を出すようになったんだそうです。手癖が悪いヤツってのは居るもんですよねぇ。……はっ! すみません!」
そのすみませんはなんだ? 俺がやってたのを知ってたから謝ってるのか? もうしてないから許して。
今報告を受けていたのはコーザ子爵だ。
ハクトを探らせているが、こいつが出向いているわけじゃないから探っているのはバレないと思うが。用心しないとコーザがやられかねない。
「いや、いい。コーザも探られてるんだろう?
気をつけろよ。外を歩く時はちゃんと護衛を付けて歩けよ?」
「オルト様! お言葉ですが、私も魔物を狩っているんですよ? 大丈夫ですよ!」
完全に油断しているが、大丈夫だろうか。まあ、弱くはないんだろうけど。一応中ボスだからな。
ゲームではウチにある闇の宝玉使う予定だったみたいだけど。俺が使わせない。だから、あの宝玉はそのまま使わずじまいというわけだ。
使ったら最後。殺されるまで暴れるから本当に最終手段なんだよな。
「そうだな。あんまり油断するなよ? コーザは誰狙ってるんだっけ?」
「いやー。子爵のララ当たりがいいとこなんですが、何せ強いやつが好きなもので。弱くても付き合ってくれるルールー伯爵令嬢が狙いかなと思ってます」
脳内データだと
ルールー・アルセンス伯爵令嬢(難易度:D)
(青い髪の肩まであるパッツン。眉毛バッサバサ。いつも冷静。長身でスラリとしている)
レベル20以上くらいで落とせる。
特徴としてドSだから、ドMが好き。
「うーん。たしかにコーザにはお似合いかもな。あっちが上だから気に入られればいいな? その為にはやられキャラ演じた方がいいと思うぞ?」
「そうなんですか? それはちょっとプライドが……」
眉間に皺を寄せて厳しい表情をするコーザ。その反応もわからなくはない。貴族ともなればみんなプライドが高いのなんのって。
我に逆らうのか平民が。みたいなスタンスのやつが沢山いるからなぁ。この数ヶ月でそんな振る舞いをしているやつを多々みた。
俺は公爵だから逆らってくるやつはいないけど、俺は全然権力は振りかざしてはいない。元のオルトは酷いもんだったみたい。
今だに昔のオルト様は……って話をされる。そうなるといたたまれない気持ちになって謝る。
「落とせなくてもいいのか? 一回冗談でもいいから
「わ、わかりました」
ルールーはもしかしたら、コーザと婚約するかもな。
それもゲームと違う。
ハクトには警戒されるだろうが、その方がかき乱せるかもな。
「オルト様、笑顔が恐いですぞ?」
「あぁっと。すまん」
楽しくなってきちゃった。
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