第10話 希少種発生
この日もレベリングに行こうと玄関に使っていると兵士が慌てて屋敷に駆け込んできた。
「西の森に魔法を使う黄鬼が出たと連絡があったそうです! なんでも、オルト様に出撃してもらいたいと。出撃願えますか!?」
突然の要請にこちらも驚く。何せそんな要請は今まで来たことがなかったからだ。
「誰からの要請ですか?」
「レオン王子です!」
あの王子何考えてるんだ?
俺に獲物を倒して早く強くなれって言いたいのだろうか。
「わかりました。ちょうど西の森には行く予定でした。討伐してきましょう」
西の森へと急ぐと森が騒がしかった。
魔物同士が牽制しあっているんだろうか。どこからともなく恫喝するような雄叫びが聞こえたり、悲鳴のような声が聞こえる。
魔物達の間でも事件だということだろうか。その黄色の鬼というのは。この森は力の赤鬼、技の青鬼の森なのだ。あの二つの種族は仲良くやっているようでよく俺をタッグで倒しに来る。
「ガギガガァァァ!」
俺の目の前に煙を上げながら吹き飛んでき赤鬼。剣を振るうことでその赤鬼は首を置いて退場して貰った。この先に
「ダークアロー射出待機」
俺はここ数ヶ月でだいぶ魔法を使えるようになって来ていたのだ。こんな待機するという芸当もできるくらいになった。
周りに黒々とした矢を待機させながら歩いていく。前を朧気に見ながら周囲も確認する。何か動きがあったらいつでも打てるようにしている。
────ゴォォォォ
前から炎弾が飛んできた。
咄嗟に横に転がって避ける。
頭がおかしいとしか思えない。
こんな森の中で炎の魔法を使うとか何を考えているんだ。いや、何も考えていないからできるのかもしれないが。
「いけ」
炎弾が飛んできた方へとダークアローを飛ばす。着弾したようだが、当たってはいないだろう。手応えはない。
────ガサッ
音がした方へと駆ける。
俺のレベルは現在45だ。この森のレベリングは50までが推奨。大抵の魔物は俺らの敵ではない。おれは狩る立場にいる。だから、攻めるのだ。
いた。
小さい黄色い鬼。頭の横から角が生えて上へと伸びている。素早さを活かしつつ陰に隠れて魔法で始末するという戦法を使うようだ。
だが、相手が悪かったな。
生憎、俺も魔法を使うんだ。
「スロウ」
射程に入った所で黄鬼に速度を落とすデバフ魔法をかける。速度が落ちたことが分かるとこちらを振り向いた。
「ギギガァァ!」
不可視の魔法が放たれた。
あれはおそらく風魔法。
空気が歪んで見えるから大体の方向はわかる。
射線から外れるように躱しながらこちらも魔法を放つことにした。
「ダークアロー」
複数のダークアローを少し左に多めに撃ちながら右へとかける。この辺の駆け引きになると魔物は途端に弱くなる。そこまで頭を使って戦うことができないのだろう。
「終わりだ」
小さな体を真っ二つに斬り裂いておわる。
奴らは魔力となって消えていく。
不思議なものだ。
実態がありながら死ぬと魔力に戻っていく。最初この森にきてそれには驚いた。だが、それが俺たちがレベルが上がる元になっていると考えられているそうだ。
ここの鬼の場合はそれを吸収してレベルが上がっていくのだとか。他の森の魔物たちは死んだことで身体から開放された魔力を吸収するようだ。
後ろから草木が擦れる音が近づいてくる。
振り返るとそこにはハクトがいた。
「あぁ!? なぜオルトがいる!?」
俺の方が目上なんだが、それを今考えてる余裕はないのだろう。不敬だと斬り捨ててしまいたいところだが、後ろには恐そうな護衛を連れていた。
「私のところに要請が来たのでね。ハクト殿は何故ここに?」
「あっ、すみません。えーっと、王子様から我等にも要請があったので様子を見に来たのです」
なるほどな。俺とハクトを合わせてその護衛を見定めろってことか。恐らく会えば何かがわかるかもと思ったのかもしれない。
「そうでしたか。これは何かの手違いだったみたいですな。御足労頂いてすまないが、私が倒してしまったよ」
「そうですか。それでは、俺たちは戻ります」
「あぁ。すまなかったね」
後ろにいた護衛はこちらをずっと見つめている。
────バチッ
頭の中で火花が散った。
「あのヤロー」
俺の頭の記憶を読み取りに来たところを俺はマインドガードというの記憶を読み取られないようにする魔法を施していたのだ。その魔法が干渉してきた魔力を弾いたようなのだ。
同じように闇属性の使い手がいるみたいだな。だが、いい情報が手に入った。俺と奴らのレベルはそこまで離れていないようだ。
でなければ弾くことすらできないのだから。それだけの情報が持ち帰れるだけでも良しとしよう。収穫はあった。
「せっかくだがらレベリングしてから帰るか」
その森ではその日、浅い層に魔物が居なくなったそうだ。
屋敷に戻ると変わったことがなかったかをいつも聞くのだが、今日は変わったことがあったそうだ。
コーザが訪ねて来たんだとか。
表立って訪ねてくるなんて珍しい。なにか緊急だったのだろうか。
通信魔道具で呼び出すが、反応がなかった。
明日はいよいよ二回目の社交会である。
イメージしている作戦を頭の中で巡らせながらその日は寝た。
夢ではコーザが笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます