音楽を愛する者の心からそれを取り上げることは、誰にもできない
- ★★★ Excellent!!!
古くから音楽をはじめとする芸術は、金と権力の庇護の元に培われ守られてきました。その反面、金持ちや権力者によって奪われ穢されてきたと言う皮肉な背景も。
ですが、音楽を創り上げ、数百年に渡り演奏・鑑賞し続けてきた者たちによる愛と献身、情熱は、いつの時代も確かなものであったと思います。
この物語はそんな彼ら、音楽を純粋に愛し追求し続ける者たちが巻き起こす、奇跡。音楽への愛に溢れた美しいエンターテイメント作品です。
一つの世界は、少し前のどこかの国を。
もう一つは、そう遠くない未来のどこかの国を。
そして最後は、現在の日本によく似た世界。
危険に身を晒しながら音楽を求め続ける彼らは、ある日不思議な鏡を通してそれぞれの世界に触れ、音楽を通じて絆を深めていきます。そして辛い現実に立ち向かい、壮大な計画を胸に自分たちの音楽を守り抜こうと奔走するのです。
主人公は重度の腐寄りブラコン、その兄は超絶天才イケメンで変態的シスコン。異世界猫耳(風)美少女は秒でオタク化 & 兄推し。ブロマンス的な美形師弟…という豪華絢爛鬼盛り設定。ありがとうございます。
さらに、苦悩からの脱却と家族愛、鏡の向こうで起きる事件はスリリングな展開、あの人物の意外な正体、ピュアで切ないラブロマンスなどなど、ストーリーの巧みさ面白さはオリガミつき。
そしてなんと言っても瞠目すべきは、音楽表現の素晴らしさです。楽曲や演奏についての描写が凄まじく、曲を知らなくとも心が震え映像が浮かび、涙が滲むほど。登場人物たちの音楽にかける愛と情熱が、曲と演奏の描写が、神々しいまでに美しい!
人類は未だに、破壊や暴力が蔓延る世界から抜け出せない。
けれど、崇高な芸術を生み出し愛し続ける力も持っている。だから私達は、この世界を諦めずにいられるのかもしれない……そう思える作品でした。