エイリアンの心臓

長門拓

エイリアンの心臓

 翌朝、ぼくは出荷される。ぼくはそのことを少しもおそれてはいない。むしろほがらかな気分ですらある。敬愛するジョー先生はこう言ったものだ。「あなたはこのために生まれたの。そのことを誇りに思いなさい。天国で神様はあなたを限りなく愛して下さるでしょう」。ジョー先生の言葉に偽りはない。ジョー先生は本当にぼくを愛して下さった。そんな先生の言葉に疑いを抱いたら、それこそ神様に叱られるだろう。

 ぼくは少しも懼れていない。ぼくはぼくの運命をとうに受け入れている。

 だから、今夜こうして眠れずに寄宿舎きしゅくしゃのベッドの上で何度も寝返りを打つのも、こっそりと冷蔵庫のミルクを飲みにひんやりとした廊下を忍び足で歩くのも、それでもやはり眠れずに中庭へと通ずる扉を開けて寒々さむざむとした外気に触れるのも、懼れという感情から来る行為ではない。ぼくはそう自分に言い聞かせる。ぼくの手の震えはきっと今夜の寒さのせいだ。ほら、いつの間にか中庭には土や草をあらかた覆い隠すほどの、真っ白な冷たい雪が積もっている。これでは寒いのも道理というものだ。身震いしても仕方がない。

 ぼくはお月様を見上げる。ナイフのように冴え冴えと磨き抜かれた三日月が、凍りつくような真冬の地球を照らしていた。

 今夜でお月様ともお別れだ。ぼくは冬の夜との名残を惜しむ。

 けれど、ぼく一人が地上から去ったからと言って、果たしてお月様は悲しむだろうか。

 無論、お月様は生き物ではないから、人間のように淋しがったりはしないだろう。ぼく一人がいなくなったからと言って、お月様が明日から空のめぐりを停めることはないだろう。

 そう考えると、なぜか無性に淋しくなる。


 ねえお月様。それでもぼくはお月様に語りかける。

 ねえお月様。ぼくは勇敢に出荷されようと思います。微かな手の震えも、この弱い心も、ぼくは運命の名の下に受け入れるでしょう。

 誰もぼくの死に気を留めなかったとしても、あなただけはそれを知っててくれるでしょう。

 だから今夜は、もう少しだけ、ぼくの友達でいて下さい。ぼくはそれ以上に何も望みません……。


「それはたやすい願いだね」


 前触れもなく、急にそう語りかけられた。声のした方に目を向けると、月光の冷たい光に照らされて、四肢が銀色に光る『ぼく』を発見した。

 それは紛れもなくぼくの姿だったが、ぼくではなかった。

 ぼくは意外にも驚かなかった。あるいはどこかで見た夢の続きなのかも知れない。夢の中ではどんなことでも起りうる。こんなに三日月の冴え冴えと白い夜には、こんなにも不思議なことが起こるのだ。

 ぼくは訊ねた。

「君は……、ぼくの友達?」

『ぼく』は鼻で笑う。

「初めて会ったのに友達も糞もないだろう。まぁ、これから友達になるってんならわかるが」

「君は誰なんだい?」

「君の姿をしているが、中身は……そうだな、とりあえず『エイリアン』とでも名付けて置こうか」

 エイリアンと名乗る『ぼく』の話によると、彼は遠い星からはるばる地球にやって来たらしい。実体のない雲のような存在なので、とりあえず目に付いたぼくの姿を真似しているのだと言う。

 彼は続けてこう言った。

「学校が『灼熱休暇』なので、自由研究のレポートを書かないといけないんだ」

「それは大変だね。あと何日で書かないといけないの?」

「君たちの時間に置き換えると、およそ二十五年といったところか」

 ぼくは驚いた。そんなに時間があるなら、ずいぶんとぶ厚いレポートになるだろう。

「それはうらやましいな」

「レポートを書くのがかい? 君も変わってるね」

「いいや、ぼくは明日死ぬ運命なんだ。一度くらいレポートなんてものも書いてみたかったよ」

「明日死ぬ運命? どうしてそんなことになってるんだい?」

「そう決まっているからだよ」

「ふうん。それでどういう死に方をするんだい?」

「わかんないよ。誰も教えてくれなかったからね」

 エイリアンは首を傾げ、何かを考え込んでいる。

「どうしたの?」

 そうぼくは訊ねた。彼は見る見るいたずらっ子のような表情に変わる。

「ねえ、これは提案なんだけど、俺と入れ替わってみないかい?」

 エイリアンからの、そんな突飛とっぴな提案が、すべての始まりだった。


「ちょっと待って。入れ替わるって、君とぼくが?」

「そう言ってるじゃないか」

 ぼくはぶんぶんと首を振る。

「それはダメだよ。ぼくは明日死ぬことになってるんだ。出会ったばかりの君にそんなことをさせるわけには行かない。これはぼくが引き受けるさだめだよ」

「君もずいぶん頭が固いね。いいかい? 君がどんな死に方をするのか、俺は興味があるんだ。それで君は『灼熱休暇』のレポートに興味があるんだろう? なら入れ替わってみるのが最適解だと子どもでもわかる話じゃないか」

「でも、それだと君は死ぬんだよ?」

 はははと声を立てて笑うエイリアン。

「心配無用だよ。俺の実体は雲のようなふわふわとしたガスだから、君たちに固有の『死』というものが存在しないんだ。刺されても撃たれても、俺は俺であり続けることが出来る」

 ぼくは狐につままれたような気分になる。本当に狐につままれているのかも知れない。

「でも、ぼくはレポートを書いたことなんてないから、君に迷惑かけるかも知れない」

「二十五年もあるんだ。レポートの一つや二つ、簡単なものだろう? ゆっくり書けばいいさ。そうしてくれると俺も助かるんだ」

 ぼくは考える。確かに二十五年もあれば、かなり難しい、専門的なレポートでも書くことが出来るようになるかも知れない。何しろ二十五年というと、ぼくが生まれてから今日までの時間を二回繰り返しても、まだお釣りが来るくらいの長さだ。ぼくにはそれが途方もない長さに思えた。

 ぼくの心は揺れた。

 数分前まではあんなにも死を覚悟し、受け入れていたというのに、もしかするとまだ生きられるのかも知れない。そう考えただけで、心は揺れに揺れた。まるで夢のような話だ。

 ぼくは念を入れて訊ねる。

「念のために聞くけど、二十五年経ったらぼくはどうなるの? それと、二十五年もぼくはどこにいればいいの?」

 彼は答える。

「また入れ替わればいいさ。あと、俺の友達に頼んでおいてやるから、君の暮らしに困らない程度のお金や住まいも準備しておく。もしここが嫌だと言うのなら他の土地や星でも構わない。安心していい。俺たちは信義しんぎを大事にするエイリアンなんだ」

 ぼくは随分悩んだが、最終的には彼の提案を受け入れることにした。どうせ明日には死ぬ筈だったのだ。仮に彼の計画がうまく行かず、そのために死ぬことがあったとしても、ちょっとばかり遅れた〆切を迎えるに過ぎない。

 一つだけ懸念はあった。ぼくを愛してくれたジョー先生に、どう申し開きすればいいだろう。

 そのことを伝えると、エイリアンは妙に片付かない顔をした。

「そのジョー先生という人は、君が死ぬことを知っているのかい?」

 そうだとぼくは頷く。

「ジョー先生はぼくにこう言ったんだ。『あなたはこのために生まれたの。そのことを誇りに思いなさい。天国で神様はあなたを限りなく愛して下さるでしょう』って」

「それはおかしいな。実存は本質に先立つものだ。誰も何か特定の目的のために生まれる道理はない。第一、天国なんてどこにもないぜ。君は騙されてるんじゃないか?」

 ぼくはジョー先生の悪口を言われてついカッとなり、エイリアンの横っ面を殴り飛ばそうとした。けれども、エイリアンの横っ面はふわふわとしたガスのようなものであったから、ぼくの拳はぐるんと空を切り、勢い余って無様ぶざまにぼくの方が倒れる。

 エイリアンは笑った。

「悪口を言ったのは悪かったよ。けれどよく考えてみるんだな。何しろ二十五年もあるんだ。洗脳が解けるには十分すぎる時間だろう」

「……ぼくは、洗脳されてなんかない……」

 か細い声で抗議する。エイリアンはそれ以上、何も言わなかった。



   〇



 もしかすると早まったことをしたかも知れない。そう思った時にはもう遅かった。エイリアンの彼はぼくに成り代わり『出荷』されてしまった後だったからだ。

 エイリアンはぼくと寸分変わらない姿となって、迎えの車に乗せられた。そして何処へともなく連れ去られて行った。寄宿舎の窓からは、何人かの友達が顔を覗かせていた。ある者は手を振り、ある者はうらやましそうにじっと眺めている。

 これでぼくは生き延びる権利を得た代わりに、天国の扉をくぐる資格を失った訳だ。そのことが、しばらくはずっとおりのように心にわだかまった。


 ぼくは彼が残した『雲の膜』という道具に身を包んでいる。これで他の人からは見えないのだそうだ。

 そうして待っていると、エイリアンの友達と名乗るふわふわした雲がやって来た。そしてぼくもまた、何処へともなく連れ去られて行った。ジョー先生への別れの言葉を、ぼくの口からはついに告げることは出来なかった。それもまた、心残りだった。

 ぼくはこっそりと小声でつぶやく。さようなら、ジョー先生。今日までありがとう。



   〇



 今日もまた一人の少年を『出荷』した。

 私は寄宿舎のリストから彼の名前を抹消する。口の堅い業者に依頼して、部屋の内部も念入りに清掃してもらう。あの少年が存在した痕跡は、一切この世に残してはいけない。

 私は日課の紅茶を啜りながらひと息つく。窓外の一面の雪が陽射しにきらめいている景色を眺める。一つのタスクを終わらせた充実感を噛みしめているうちに、私はあの人懐っこい少年の名前をすっかり忘却していることを確かめる。

 心の痛みがないわけではないが、あるわけでもない。そんなものはこの世界の秩序の前では不似合いなものに過ぎない。

 部屋の片隅に置かれている黒電話が鳴り出した。そういえば定期報告の時間だった。

 私は重い腰を上げて受話器を取る。この部屋の黒電話は『本部』に直通なのだ。

「もしもし、こちらジョー」

 ひんやりとした受話器の向こうから、男の声が届く。

「こちらジャック。ドナー1名を確かに受領した。一週間後にいつもの口座に振り込む」

「ご苦労様です。今回はいくつに『分割』するの?」

「ざっと四分割だ。現場で二つ移植し、もう二つは某方面に輸送する」

「そう」

「そうそう。来月に新たな予約が入った。二人ほど見繕っておいてくれ」

 私は眉をひそめる。

「このところ多くない? こちらも無限に『在庫』があるわけじゃないのよ。それに最近は『番犬』がうるさくて」

 男は微かに笑い声を立てる。

「大口の予約だからな。断るわけにも行くまい。『番犬』のことなら大丈夫だ。すでに鼻薬はきかせてある。それじゃ頼んだぞ」

 私は了解する旨を伝えて電話を切る。そろそろ在庫を増やす段取りも考えないと行けない。そのことを考えると億劫になるが、まあ何とかなるだろう。手に負えなければお偉いさんにお鉢を回せばいいだけの話だ。

 残りの紅茶をゆっくりと啜る。さて、誰を見繕おうか。窓外の空を流れる雲を眺めながら、脳裏のリストを思い浮かべつつ、私は思案する。



   〇



 何かがおかしい、という違和感はあった。

「血圧は正常。心拍数も正常。健康そのもののドナーだ」

 私はそう呟く。本来ならばさっさと取り掛かるべきなのだろうが、どうも気に入らない。私は私の無意識の囁きの前に逡巡しゅんじゅんする。

 ジャックは相変わらず上から怒鳴りつけるだけが能らしく、早く始めろとせかすばかり。

「いいから早くしろ。慎重になるのはわかるが、後がつかえてるんだ。それとも今さら怖じ気づいたのか?」

「何を馬鹿な」

 私はジャックのあおりを一蹴する。やるからには完璧を目指したいだけなのだ。そのためには、この違和感のよって来たるところをはっきりとさせたい。

 しかしどうにもはっきりしない。何かがすっきりしない。

 この違和感は何だろう。私には全くそれが掴めない。

 そうしてぐずぐずしているうちに、さすがに技術屋の私にも、これ以上の遅延は許されないことがわかり出した。ジャックはイライラを通り越して呆れている。

 私は澱のような違和感を強制的に拭い去ろうと決意する。仕方ない。これも仕事だ。


 人体というものはよく出来ていると、いつも感心させられる。あらゆる構造が複雑に絡み合い、一つの見事な有機体を成している。

 その複雑な有機体から部分を意図的に摘出し、ある部分は他の施設に搬送する。ある部分はこの場で別の顧客に植え替える。それが私の仕事だ。

 その仕事を芸術的に成し遂げることだけが私の興味であり、本分であり、生きがいでもある。その他のことは全て瑣事に過ぎない。

 一般的な感覚を持つ奴から見れば、これが神をも恐れぬ所業だと言うだろう。だが私は神など信じていない。むしろ私が神だと誉めて欲しいぐらいだ。

 有機体からあらゆる部分を切り離すと、個体は絶命する。当然の成り行きだ。

 だがそこで、私はまたも違和感を抱く。数値に表れない深層の疑惑。私の直感が何かを掴みかける。それがつい口に出る。

「貴様……、この世のモノじゃないな……?」

 あらゆる部分に切り離された有機体は、確かにしばらくは静まり返っていた。そのうちに、何かをこらえることが出来なくなったとでも言いたげに、各部位がそれぞれにふるえ出した。それは紛れもなく笑いだった。くすくすという笑い声までが耳朶じだを打った。

 有機体はついに言葉を発した。


「……ばれちゃった。自分で言うのも何だけど、かなり完璧な擬態だと思ったんだけどな」


 有機体の部分であるところの眼球が、保存溶液の中でガラス越しにじろりとこちらを見つめた。私は震えながら、しかし逃げることも出来ずにその眼差しを一身に受けていた。

「何なんだ、貴様は……」

 そう言うことだけが精一杯だった。太ももの辺りに生ぬるい感覚を感じる。手術室の中だと言うのに、どうやら私は失禁しているらしい。

 有機体は続けて言う。

「どうしたの? これからこのパーツを他に植え替えるんでしょ。早いとこやっちゃいなよ。新鮮さが命だと思うんだけどな」

「……貴様のような得体の知れないモノを植え替えるなんて、出来るわけがないだろう」

 有機体は首を傾げた。

「どうして? 各部位の機能に問題がないことは、あなたが一番わかってるでしょ? 心配せずにやっちゃいなよ。もう死ぬことは経験したから、次の段階を早く経験したいんだ」

「……」

 有機体が焦れる。

「要求じゃなくて、命令の方が効果的なのかな? じゃあこう言い替えるね。今すぐ次の段階に進むんだ。そうしないと、あなたの命は保証出来ないよ。あなたの家族にも累が及ぶかもね。くっくっく」

 嫌らしい哄笑こうしょうが室内ではじける。私は叫び出したい気持ちをやっとの思いで抑え、観念し、手術を続行した。他の選択肢があるとは思えなかったからだ。


 やっとの思いで、定められた一連の業務を終える。顧客Aに植え替えた心臓は正常に鼓動を打ち、顧客Bに植え替えた肺は健全に膨らんだり縮んだりしている。

 暫くすると、乱雑に残された部分が私にこう語りかけた。

「なかなか見事な腕前だったよ。ゴッドハンドってこういうのを言うんだね。誉めてあげる。……あれ、もう俺の言うことが聞こえなくなっちゃったかな。ちょっと怖がらせすぎちゃった? もしもーし、もしもーし、聞こえますかぁ?」

 私の空ろな心に響く有機体の声。私は精魂尽き果てた廃人のように惚けたまま、血なまぐさい部屋にただ一人、うずくまっていた。



   〇



 わたしのパパはえらいひとです。へいかからたくさんのくんしょうをもらい、テレビやしんぶんにもよくでています。

 パパはいつもいってます。わたしはパパのほうせきなのだと。かけがえのないたからものだと。わたしははにかみながらパパにだっこされます。わたしはパパがだいすきです。

 わたしはびょうきになりました。しんぞうがわるいのだとおいしゃさんはいいます。けれどもわたしはくじけません。パパはぜったいになおしてやるとやくそくしてくれたからです。わたしはパパをしんじています。パパはうそをついたことはありません。しごとがいそがしくてゆうえんちにつれていってもらえなかったことはあるけど、おしごとだからしかたありません。わたしはやっぱりパパをしんじています。

 だんどりがついた、とパパはいいました。だんどりとはなんでしょう。じゅんばんはおかねでかえる、ともパパはいいました。なんのことだかわたしにはさっぱりわからないけど、パパがうれしそうなかおをしているので、いいことなのだとおもいます。

 それからすぐに、わたしはパパといっしょにひこうきにのりました。ひこうきにはなんどものりましたが、こんなにながくのるのははじめてです。ちょっとむねがくるしいけど、パパをしんぱいさせたくないのでがまんしました。

 ひこうきのまどからは、たくさんのくもがみえます。うえにもしたにもくもがいっぱいです。ときどき、おつきさまもみえます。

 パパがねむっているとき、まどのそとのくもがわたしにはなしかけるゆめをみました。きっとゆめなのだとおもいます。くもははなしかけたりしないからです。

 でもゆめのなかで、くもはこういいました。


「そうまでして、君は生きたいか?」


 そうまでして、とはなんでしょうか。わたしにはわかりません。

 けれどもわたしはいきたいです。やりたいことがたくさんあります。パパもいきてほしいといいました。だからわたしはいきるべきなのだとおもいます。

 そうこたえると、くもはいいました。


「君に罪はない。けれども全てを知った時、君は罪の重荷に耐え切れるだろうか?」


 くものいうことはむずかしくて、よくわかりません。わたしはまだこどもなのです。


「君もやがては大人になる。もしかすると、罪について知る日が来るかも知れない。来ないかも知れない。それともその罪は、この世界の忌まわしい秩序の前では、ちりのように他愛のないものなのだろうか。ぼくはその秩序を憎む。なぜなら、ぼくは塵などではないから」


 わたしはねむくなりそうです。


「ぼくがここにいたことを、多分君は知ることすらないだろう。命が平等ではないことを、君はいずれ知るだろう。その時、君は何を思うだろう」


 わたしはくものことばをこもりうたにして、うとうととねむります。


「これ以上話してても仕様がないね。ぼくは君に罰がくだればいいとは思わないよ。本当に罰が降るべき人たちは、他にたくさんいるからだ。でもぼくの思いとは無関係に、罰は降るべき時に、降るべき人の所に降るだろう。降らないこともあるだろう。何はともあれ、君はもうすぐ、


 エイリアンのしんぞうとは、なんのことでしょう……?


「君は知らなくてもいいことだよ。さあ、ぼくはもう行く。レポートを書かないといけないんだ。まだ何を書けばいいのかもはっきりしないし、そもそもこれからどう生きればいいのかもわからない。だけどようやく、ぼくは自分の力で歩くことを覚えたんだ。ぼくは後悔しないように、せめて精一杯歩いてみようと思う」


 じぶんのちからで、せいいっぱいあるきたいと、わたしもおもいます。


「さようなら。エイリアンはいつでも、君のそばにいるよ。今はゆっくりおやすみなさい」


 エイリアンはいつでも、わたしのそばにいます。

 おやすみなさい、エイリアンさん。

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