お仕事小説でありながら、キャッチ―で読みやすい。

テーマパークの警備員という普段意識することのない裏方を描く作品。


お仕事ものと言うと、硬派な印象があるが、本作は全体的にゆるっとした雰囲気に包まれていて、すごく読み心地が良かった。


本作を唯一無二の空気感にしているのは、テーマパークにいるアクターやマスコットキャラクターたちが「現実と非現実の境界線が消えかかってる」点だと思う。
そのせいで、バックヤードなのに、みんなキャラクターの設定のまましゃべったりしている。


こういうテーマパークの裏方を描く作品は、マスコットと中の人のギャップを描きがちだが、本作は中の人なのにほとんどキャラクターそのまま。


テーマパークの裏側というリアルな設定にも関わらず、作中の人間模様がどこか現実離れした濃いフィクションになっていて、このギャップが独特の浮遊感みたいなものにつながっていると感じた。

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