最終話 やっぱり『わたし』、
やっぱりタイトルを見るに、『わたし』なんだなと思った。ちなみに最後の一行は、僕と出会ってから変えたらしい。これが受賞すればいいなあなんて思う前に、まずは目の前のボールを追おう。せっかく
その日の僕は一回戦敗退。情けない姿を見せ付けることになったけれど、
「絵を描かなくなってから詩に損ないの言葉はどうするようにしたの?」
「今も変わらず出て来て、放置してる。ちょっと気持ち悪い」
「これからは、『わたし』にそれを共有させてほしいな。断片的でも、意味をなさなくても、言葉にならない模様を教えてよ」
「ありがとう。そうするね」
彼女の屈託のない笑顔は僕から心配を奪い去る。
「それにしても悪いね。負けた上に奢ってもらうなんて」
「慰めたいから。でも、わたしが落ちたら落ちた作品の分だけご馳走してね」
これは、なんとしても受賞してほしいな。できれば全部。でも、
「今ちょっと悪いこと考えてなかった?」
「ぐっ、全部お見通しだね」
「『わたし』、だからかな?」
続けて「えへへ」と笑った。
駅へと向かう道は下り坂で見通しが良い。ずっと先には地平線が見える。街の中では分かれているように見える天と地も実はずっと接していたんだなと気付く。
同じく学校の中だとわからないけれど、外では
視線を逸らして手を伸ばそうとしたら、
やっぱり『わたし』、なんだと思った。
詩に損ないの『わたし』たち 詩一 @serch
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