傷付いたふたりの想いは壁の向こうに

誰かに言われるがままに、誰かの言いなりに、そうして生きてきた。そんな風に思えてならない主人公ウルリーケと、傷つき続けてきたスヴェンとか出会い、そして彼らの時間は動き始める。
それまで凍っていたものが、ゆっくりと融けていくかのように。

これはある意味で、彼らの再生の物語であったように思えてならないのです。
誰かの思惑のまま、個人を見てもらえることのないまま、誰かを理由にして生きるしかない。その生き方はいっそ哀れでもある。
けれど壁が崩れ、その向こうにあったものが見えることで、彼らは共に前へと進んでいく。

もちろんまだ問題は山積みなのでしょう。
それでも彼らの行く末に幸あれと、そう願ってやまないのです。
ぜひ、ご一読ください。