当事者たちが"見た"2つの醜い結末

なんだか凄いものを読んだ。
最初は実験的な文体と構成に惹かれたからページをめくった。
時々際どく、しかしリアルを追求した実験の解説に驚きながらさらに読み進めた。
アクションシーンが始まって、淡々としたグロテスクな映像表現が懐かしのエイリアン映画を思い出させた。しかし舞台上のカメラに制限された視点のせいで妙に不快感が増していく。

研究者たちの思惑が主観的に綴られ、舞台が研究室の外に広がってから、エイリアン映画(決してエイリアン物語ではないが)は、人間の狂気を纏ったホラー映画へと次第に姿を変えていった。

唐突に登場する新たな悪

マッドサイエンスから日常恐怖への移動

知る者と知らない者たちによる非対称な視点変化

これらが噛み合わさった時、ホラー小説としての最高の演出が待っている。



最後に、完結とは到底呼べない結末にふと思う。
誰が何のためにこの資料を集めたのだろうか。

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