呪(しゅ)に交われば……。

国直轄の特務機関「対怪異浄化情報収集室」。ひょんなことから、その組織で働くことになった梅小路翠子さんを中心に、ぶっきらぼうな先輩上司の烏丸颯君、「見えない側」の人であるにも関わらず「怪異」大好物な勧修寺先生、魅力ある個性的な面々がその能力を駆使して怪異を祓う冒険活劇……的な物語ではありません。彼ら一人一人の内面や巻き起こる怪異が、やわらかな語り口で繊細に丁寧に描写されるので、奇妙な現実感を伴って読み手に迫ってきます。「脱皮する人間(!)」「ひとに寄生する植物」など、どのエピソードもタイトルだけ見れば、おどろおどろしい印象を受けますが、どちらかといえば硬質で乾いた筆致が、不思議な空気感を立ち上げて、奇妙な味わいの幻想譚に仕上がっています。その文章を噛み締めるように、物語を味わってください。

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