私は雑木の中に埋もれて、人知れず暮らしたいと思う。

三十年一緒に暮らした夫と離れ、静かな山の中に移り住み一人で暮らす女性。近所にある、お気に入りのイタリアンレストラン。近隣住民との淡い交流。日常は些事の連なりとでもいうように、淡々と時は流れ季節は移ろう。二年ぶりに夫が訪ねてきても、その静謐な描写は変わりません。物語が起ち上げる空気を、丁寧に味わうことを楽しめる小説です。