パンにつられただけなのに

 これを買おうと決めていたのに、いざ商品の前まできておきながら結局手ぶらで店を出る。これ、よくあります。だから朱琴ちゃんが高い値段のパンをためらっているとき、「あーわかるなあ」と共感しました。「それ、わざわざ買う必要ある?」って、出てくるんです。もったいないオバケ。でも水族館のシーンで、思い出を買うための値段というものを知りました。

 秀逸なタイトルはどんなストーリーなのかおおよそ察しがつきます。そう、マーケティングを題材にした作品です。
 『晴飛先輩、経営を教えてください! 13歳社長のパン屋さん再生物語』は児童向けの読みものとして楽しめながら〝ついで〟にマーケティングについての知識が身に付きます。
 つまりあらすじだけ読んで「経営は難しそう」と遠慮するのはもったいないのです!!

 児童向けなので難しくもなく、堅苦しくもありません。
 ねらいを定めて情報を集めて作戦を立てる。よく見てよく聞く。これだけ。朱琴ちゃんのやっていることは、いたってシンプルです。
 受け取り方は人それぞれですが、個人的には、いろんな人と会話して声を聞くことがどれだけ重要なのか学べました。
 アイデアを考えようにも一人だけでは限界があります。外からの刺激が大切なのです。


 それにしても、マーケティングを教えてくれる晴飛先輩がとても頼りになります。でもそれだけではないキャラクター性も魅力的です。

 児童小説に興味のある方はぜひ読んでみてください。