概要
自由と幸福から遠い者たちの嘆きを書きつけた小品(全5話)
《あんたもきっとあたしを見捨てるんだろう……!》
《あの朝、わたしは歯をぎりぎりさせながらそう思ったんだ。「ずるい!」って、心んなかで甲高く叫んだんだ。》
《私は閉鎖を余儀なくされた教会や修道院、追放ないし投獄された同胞たちのことで頭がいっぱいになり、不器用に、とぎれとぎれにしか話すことができなかった。》
《汗と血の臭いがこもった中でじっとしてたところに、それとはぜんぜん関係ねえ新鮮な空気が触れたもんだからか、本当に、身も心も、痛みが一挙にぶり返してきたようだったんだ。》
《あんたらは言うなれば神を担いでわんさと人殺しをしているわけだが、よもや彼の〈王国〉に迎え入れられて永遠を生きられるなどとは思ってはいまいな。》
急激な政教分離政策に揺れる某国。教会財産は次々と没収され、多