第八話 信頼
マシューさんと永遠に続く道を歩いていた。だが、マシューさんが疲れたというので、一度立ち止まって休むことにした。
マシューさんは貴重な水を持っており、少し分けてもらうことにした。
喉が渇いていたので、とても水がおいしく感じた。
「マシューさんはどうしてここに?」
「あぁ、それはね。オリビアの話したよね?」
「はい」
「その時に少しさかのぼるんだけど、今回はオリビアが僕の難易度に合わせてクエスト選んでくれたんだ。僕ができるのは薬草や小動物のクエストしかできないから……今回は森に行ってたんだ?」
「もしかして、歩いていたら急に?」
「そうそう。もしかして君も?」
「そうなんだ。パートナーがトイレしたいっていうから待っていたらこのざまだよ」
「あはは!君のパートナーは面白いんだねー」
「どこが面白いの?」
僕は、首を傾げながら言った。すると、マシューは笑いを落ち着かせてから言った。
「だって……パートナ女の子でしょ?」
「そうだが……」
「女の子が外でトイレなんてありえないよ!……多分彼女はそういう趣味なんだろうね」
「そういう趣味?」
「あぁ露出狂という趣味があるんじゃないかな?」
僕は苦笑しながら言った。
「あはは……それはないと思う……思いたい……」
「だよね。ありがとう。さぁ進もうか」
「はい!」
僕たちは立ち上がり、歩こうとしたその時……
カタッと石がずれる音が後ろからした。
僕たちは、一斉に振り返る。
僕たちの目の中にいたのは、まぁまぁ大きいクマがそこにいた。
僕は、マシューに言った。
「どうする?逃げる?」
「いや……逃げても追いかけてくるだけ……だから戦う……」
「できるの?マシュー?」
「……頑張ってみる……」
「じゃぁ、後方支援お願いね!」
そういい、僕はクマに向かって走っていくのだった。
◇◇◇◇◇
休憩所から立ち上がり、オリビアさんに言った。
「行きますか?」
「えぇ、行きましょう。早く、あの雑魚と会いたいからね」
「どうして会いたいのですか?」
「……それは、あいつが心配だからだ」
オリビアさんは背中を見せながら言った。その数秒後には足が動いていて私は正気に戻り、オリビアさんの後をついて行った。
休憩中オリビアさんと色々なお話を聞くことができた。
オリビアさんの幼少期、相方の話……
オリビアさんは口では相方に対してとても辛口だが心は優しいのだとわかった。
「オリビアさん」
「なんだ?」
「どうして、あなたは相方の人とそんなに会いたいのですか?」
すると、オリビアさんの歩みが止まった。オリビアさんは俯いたまま言った。
「……悪いことしちゃったからな……」
「悪いこと?」
「あぁ、悪いこと……多分あいつが弱くなった理由は私にあるんだろうな……」
私は、オリビアさんの背中を押しながら言った。
「まぁ、歩きながら聞きますから……」というとオリビアさんは歩き始めた。
そして、オリビアさんはぶつぶつと語りだした。
「あれは、まだ相方と組んで一か月くらいの時。毎回、相方はいいところで仕留めきれず、クエスト失敗が多々あった」
「相方さん、弱かったのですか?」
「あぁ、その時はな」
「でな、それで私ついに怒りが頂点に達して相方に対して罵倒したんだ」
「あぁ……その時はそれほどストレスが溜まっていたんですね」
「そうそう。でな、その時から相方の調子が悪くなったんだ……」
「罵倒が原因で相方さんの自信がなくなったと」
「たぶんな……それから組んで半年くらいしたら一時的に私と相方は別れたんだ」
「……やりずらいから?」
「そう。で、別れた後のクエストは快適だった。とても……だが一人はとてもさみしかった……ギルドで相方と会っても私は視線そらしていた……」
「そうですか……そこまで嫌っていたんですか……」
「だけどね……別れて四か月くらいのころから彼のことが心配になってきたんだ……」
「それはどうして?彼が弱いから?」
「いいや違う……彼は臆病なんだ……」
「臆病?臆病と自信がなくなったのは結びつくのですか?」
「いいや、つかないと思う……と思いたい。相方は臆病で誰に対しても心を開かなかった。」
「誰にも?それは、オリビアさんにもですか?」
「あぁ、最初だけだがな。最初を乗り越えれば相方はいい性格をしている善人なんだ」
「彼のことしか、頭になかった……」
「それって、恋してません?」
「恋とはなんだ?」
「……いいです……今のことは忘れてください……」
少し、気まずい空気を作ってしまった私は苦笑していた。だが、オリビアさんが突然大声で言った。
「おまえは誰だ!!」と、声を出している方向を見ると杖を持った女性がいた。その女性は不気味な笑顔を浮かべながら言った。
「……一人でこの迷宮をさまよっている……魔法使いのソフィアだよ」
私は、名前を聞いた瞬間膝から崩れ落ちた。その様子を見ていたオリビアが言った。
「大丈夫か!?」と言っている間に、ソフィアはこちらに迫ってきて言った。
「……君は……ドタイフラ王国二代目王様の孫か?」
「お前はただの魔法使いか!?」とオリビアが声を張って言った。
すると、ソフィアは数歩離れて言った。
「えぇ、私はただの魔法使いです。ですが、過去に殺人を犯していますがね」と言い、視線が私に飛んでくる。
オリビアは言った。
「まさか……」
私は、震えた声で言った。
「私のおじいさまは殺されました。誰に殺されたかは最近までわかりませんでした。ですが、最近のうわさで国の専属魔法使いのソフィアがやったんじゃないかって噂が流れていました。おじいさまが死んで二か月後くらいにソフィアは国から消えていました……だから、私はおじいさまを殺したのは魔法使いのソフィアじゃないかってずっと思ってしました……」
「大正解ー。殺したのは、この私。ソフィアだよ?あの男は簡単だったよ……体を見せたら抱き着いてきて……その時にお腹にナイフを刺したのさ……あいつの遺言聞いてるよ?」
ソフィアは、数秒間を開けて言った。
「『孫は殺すな』とね。だけど、そんなこと言われたら、殺したくなるじゃん?だから……」
「あなたがこのダンジョンを作ったのね!?」
「いいえ、違う」
ソフィアに即答された。ソフィアは一息おいてから言った。
「このダンジョンは、私では作れない……技術がない……だから、ほかの人に作ってもらった」
「それは誰!?」
ソフィアは人差し指を唇に置いて言った。
「教えなーい!」
「さぁ、私を殺しなさい……エマ」
私は拳に力を入れて立ち上がった。そして、声を上げながら……本来の力を出すのだった。
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