第二章 それぞれの冒険

第六話 落とし穴

 僕とエマは、ビギナーでも受けられる簡単なクエストを受けていた。前回は、薬草だったが、今回は薬草とウサギを狩るクエストだ。

 前回とは場所も違い、手元の地図を参考にしながら歩いていく。すると、エマが言った。


「レイン?この道であってるの?」

「うん。あってるはずだよ。僕でもさすがに地図は読めるもん」

「なんですか……その私が地図読めないみたいな言い方……少しは読めるもん!」

「だけど……最初あなたに渡したけど、真逆の方向行ってたけどね」

「……それは、言わないで!」


 僕は、苦笑してどうにか場を乗り越えた。エマが突然立ち止まり言った。

「……レイン?」

「なんだよ?まだ文句でもあるのか?」

「文句ではない……」と言いながら前にも見た光景が目の前には広がっていた。


「その辺でしてこい」

「……はい……すみません」と言い、エマは少し遠くん茂みに行きトイレをしに行った。


「……ギルドですればいいのに……なんで、外で……は!もしかして、エマはそういう趣味が……!?もう、膀胱が収縮しているんじゃねぇのか?」と独り言をつぶやいていると…


「……レイン!聞こえているわよ!」と、遠くのほうからエマの声が……やばいと思いながら大声で言った。


「……何のことかな!?」と。



 すると、目の前が急に暗くなった。何事だ!?と思い周囲を見渡しても暗闇……暗黒空間が広がっていた。

 そして、落下している感覚が体で感じた。


 受け身の態勢をしないとと思い、少し体の向きを変える……だが、そんなことは意味がなかった。


 突如として、地面が現れてお尻からふわっと着地した。

 着地をすると、暗闇は消えて弱い明りが上のほうにあった。どこだここと思い立ち上がる。


 地面は石。しかも、規則正しくきれいに並んでいる。壁も石でできており、均等の距離に柱が置かれていた。しかも両側……


 その柱の上の方にはぎりぎり明かりが届きそうな松明たいまつみたいなものがあった。

 それが目の前に無限に続いている。


 このような場合、大抵は動かないほうがいいのだが……興味本位で僕は足を進めた。


 本当に何もなく、無限に同じ光景が続いていた。だが、こういうものにはどこかしらには出口があるはず……とそう信じて僕は歩き続ける。


 僕の手持ちは、剣と少量の食料とクエスト納品用の袋のみ。

 これで、何日間生き延びられるだろうと考えていると……


 目の前から咆哮ほうこうが聞こえてきた。

 僕は思わず、身構える……薄暗い暗闇の中から出てきたのは……この地域にいるはずのないライオンだった……

 僕はさすがに戦ったことがなく、どうやって対処をするのかわからなかった。すると、後ろのほうから声がした。僕以外にも人が?と思いながら振り返ると……


「おーい!大丈夫か!」


 男性だった。男性の声に、ライオンはびっくりして僕のほうに突進してくる。僕はその突進を危機一髪でよけるのだった。


 ◇◇◇◇◇

 私は何が起こったのかわからなかった。用を済ませている途中に地面が消えた。暗闇に包まれて落ちている感覚があった。


 そして、着地したかと思えば知らないところ。私は、下半身を露出したままお尻から座っていた。

 しかも、まだ膀胱には尿があり。出したいと思っていないのに、勝手におしっこは落ちた後でも出続けていた。


 そんな姿を見られたらやばいと思った時には、私は遅かった。

 遠くのほうから、人影が見えた。私は急いでしまおうとしたのだが……


 いつの間にか、その人影は顔が見えるほど近くなっていた。私は終わったと思った。だが、助かった。その人影の正体は女性であった。


 だが、その女性は私の姿を見て言った。

「露出狂?」と。


 私はパンツを急いで上げて言った。

「露出狂じゃありません!私は冒険者です!」というと、女性はくすっと笑った後言った。

「そうか。私と一緒だな。私の名前はオリビアだ。冒険者ランクはBだ」

「B!?高いですね……ということはここはクエストで?私はエマです」


 私は流れるように自己紹介をした。すると、オリビアさんは少し考えた後言った。

「うーん。わからないんだ。森を急に歩いていたらここにいてな。突然のことだったから、目を瞑ってしまって、ここに来るまでの道のりがわからなかったんだ」

「ここまでくる道のり?私はなんか暗い空間が突然私の周りを囲って地面が消えましたよ?」

「そうか……で、地上では野しょんをしていたと……」

「そこはいいですから!私の勝手です!」

「そのいいかた……やはり、あなたは露出狂ですね!?」

「だから、違います!」と話していると、後ろのほうから雄たけびが聞こえた。


 私とオリビアさんは一斉に後ろのほうを見る。

 すると、そこにいたのは……人生で初めて見た狼だった。


 狼を見てオリビアさんは言った。

「なぜここに……ここは雪国地帯じゃないだろ……で、エマお前ランクは?」

「ビギナーです」

「ビギナーか…職業ジョブは?」

「魔法使い」

「使える魔法は?」

「初級魔法と回復」

「そうか……なら、後方支援を頼む」

「はい!」


 私は初めて、レイン以外の人と組んで戦うことになった。



 戦い始めて10分ほどたったら目の前にいた狼は倒れていた。

 オリビアさんは後ろを振り返り、親指を立てていた。私は、咄嗟に親指を立てるのだった。



 オリビアさんはこちらに戻ってきて言った。

「ナイス!後方支援だった……お前と組んでる奴はいいだろうなぁ」

「何か言いました?」

「いいや。何でもない。私の相方がクソ雑魚で今にでも解散したいとか言ってない」

「本心駄々洩れですよ」

「あっ」


 オリビアさんは少し、気まずそうにしていた。私はそんなオリビアさんの背中を優しくたたき言った。


「前に進みながら話は聞いてあげますよ」というと、オリビアさんは言った。

「ありがとう。露出狂のエマ」

「なんですか!?その名前!私の名前はエマです!露出狂ではありません!」


 オリビアさんはからかうように言ってきたのだった。

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