幼馴染はオカルトマニア

「黒井、やっぱコレおかしいよ」

「……あぁ。このサイトのデータは保存しておこう。ガチっぽい」


「ちょ、ちょガチって……じゃぁ」


「ああ、ミヤマの見た『イルミネイション日本支部』が本当にあるかどうかはともかく、ためらいなく人間を殺して、臓器を取り出す連中がいるってことは確かだ」


「黒井、これを警察に知らせないと!」

「でも……不味くないか?」

「何が不味いってんだ? あ、きっかけが俺のレスバとハッキングだから?」


「それもそうだけど……それとは別の問題だよ。臓器の密売なんて、とても個人にできることじゃない。摘出には専門の医療施設が必要だし、冷蔵して輸送するのがオッサン一人にできるとおもうか?」


「じゃ、じゃあ、マジになんかの組織が関わってる? ヤクザとか……」


「かもしれない。もっと詳しく調べられればいいけど、ミヤマの目を通して見ることしか出来ないのが惜しいな」


「うーん……じゃぁ匿名で通報するとか?」

「イタズラ扱いされそうだけど、ダメ元でやってみるか」


 まさか、ネットのレスバでこんな目に遭うとは思っても見なかった。

 校舎の壁に背をつかた俺は、なんとなしに空を見上げると、窓から身を乗り出して首を出し、俺の顔を覗き込んでいた瞳と目が合った。


「うわ! 薫!」

「あんたらなにしてんのー? また悪巧みぃ~?」

「何時からみてたんだ?」

「ヤクザとか何とか~からかな?」


 ショートボブの明るい茶髪を揺らして、ケラケラと明るく笑っているのは、同じクラスの女子生徒の逸見いつみかおる


 こいつは子供の頃からオカルト好きで、俺と黒井の能力の事も知っている。


 というか、薫がオカルトに傾倒してしまったのは、俺のせいだ。


 幼いころ、近所に住んでいたこいつに、俺はうっかり千里眼の事を自慢してしまった。それで彼女はそういったことに興味を持ち、愛読書のひとつがオカルト雑誌という、女子高生にあるまじき趣味を持つに至ってしまったのだ。


「ね、ミヤマたち、またなんかやばいことになってる? 今度は何!? ついに東京湾に沈められちゃう感じ!? それとも自衛隊の実験施設送り?!」


「あのなぁ薫……お前、人のこと何だと思ってんだ!」

「リアルにアホやばくて、クソ面白い事を起こしそうな友だち」

「薫のそれ、炎上配信者とか見るスタンスだよね?」

「それな」


 こいつは何気ない俺たちの動きにも目を光らせている。

 厄介なのに見つかってしまったな。いや、まてよ……?


 薫は筋金入りのオカルトマニアだ。きっと今問題になっている「イルミネイション」のことも何か知っているかも。ちょっと聞いてみるか――

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