ブラックドッグ

黒井くろい、ちょっと話したいことがあるんだ」

「わかってるよミヤマ。ワタナベの家のことだろ?」


 俺は黒井を呼び出し、人気のない校舎の裏側で話をしている。

 黒井のやつもどことなく落ち着きがない。


 まぁ、ぶっちゃけると、今回の共犯だからな。


「お前、あの何とかってのでワタナベの家を設定したじゃん……」

「よし今すぐ自首しろミヤマ。いまならまだ間に合う」

「俺じゃね―し! 最期まで聞けよ!」


 とりあえず、俺は黒井に事の詳細を教える。


 ネットで俺がレスバした、無職中年男性が「イルミネイション」とかいう陰謀論者で、そいつが「殺す」という書き込みを最後にアカウントを消し、そしてワタナベの一家が消息を断った。という一連の出来事を黒井に伝えた。


 説明、説明なんかなぁコレ? 他人に伝えるため、冷静になって改めて物事を整理してみたが、我ながら言っていることがメチャメチャだぞ。


「お前のレスバで顔真っ赤にした、脳みそチャレンジングな無職全裸中年男性がワタナベの一家を皆殺しにしたかも。ってこと」


「全裸までは言ってない。だけど大体そんな感じ」


「それ不味くない?」

「不味いよ」


「とりあえず警察だな……仮に犯人がそいつじゃなくても、そんな妄想癖の有るやつ、病院に入れたほうがいいだろ」


「だな」


「ミヤマの『千里眼』で証拠を集めたらいいんじゃないの?」


「でも……アカウント消しちまってるからなぁ……」


 黒井は俺が超能力の「千里眼」を持っていることを知っている。


 というか実はこいつも超能力を持っている。

 黒井の持っている能力は「世界中の言葉がわかる」だ。


 ちょっとピンとこないと思うが、黒井の奴は英語だろうとフランス語だろうと、暗号だろうとプログラム言語だろうと、そこに書かれている「意思」を読み取る。


 その能力を使って、黒井はプログラムやゲームの改造をして遊んでいるのだ。


「流石にアカウント消されたら、どうしようもなくないか?」


「いや、方法はあるぜ? 書き込みは俺の言う通りやったよな?」

「そりゃまぁ、うん」


「なら、なんとかなる。書き込みのデータを復帰させてやるから、そのヤベー奴が二度と外に出てこられないよう、ブタ箱にブチ込んでやろうぜ!」

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