ワタナベと塩

「ありがとう薫。お前のおかげで……わからん事がわかった」

「もう一度説明する?」

「すでにお腹いっぱい何だけど」

「じゃぁデザートにUMAの話しよっか」

「いや、いい。転生者も神隠しも結構だ」

「残念。ってか、なんで急にミヤマが『イルミネイション』に興味持ったの?」


 む、そう言われると説明しづらいな。


「陰謀論とかくだらねーって前から言ってたじゃん」

「あー……もし、もしもだぞ? それが本当だったら?」

「最高!」


 そうだった。薫はそういうやつだった。


「ミヤマ、いっそ薫にも説明しちゃったら?」

「えー?」

「お? 聞きたい!」


 仕方ない、薫にもさらっと説明するか。


「こないだ変なやつとレスバしてな……そのとき俺が見た光景で、そいつは自分の部屋に、イルミネイション日本支部って書かれた旗を飾ってたんだ」


「ほうほう」


「――で、その旗のことをネタにしてディスったら、一言『殺す』っていって、即座にアカウントを消して……そのあと――」


「お前も知ってるだろうけど、ワタナベ一家が消えたんだ。で、そいつのパソコンの画面に写ってたサイトにいくと、それが臓器売買のサイトでな……ワタナベ一家っぽい情報が追加されてたんだ」


「ガチのやつ?」

「うん。たぶんガチのやつ」


「でも何で、ミヤマのレスバのとばっちりがワタナベ君に飛んでるの? たしか、ワタナベ君ちって家族で政治活動やってるって話だったけど……それ?」


「そうなん?」


「あー、うん。この世の真実に目覚めた系のやつ。ワクチンにはマイクロチップが入ってて、不正選挙で世界を支配してるっていうタイプのやつ」


「薫が好きそうなやつじゃん」

「バカにしないでくれる? うちとは完ッ全にジャンル違いだからね」


「想像の世界を広げるのがオカルトだもん。視野を狭くして、自分たちの世界に閉じこもるような陰謀論はウンチ!」


「クソ! まるで差が分からねぇ……」


「オカルトマニアは月額1万円のオンラインサロンに誘導したり、インチキな食品を売ったりはしないの。ワタナベくんのお父さんとお母さん、ネットで高血圧の人に血圧が下がる塩を売って、億稼いでたって話よ」


「ガチの害悪じゃん。でもなんで塩?」


「塩って賞味期限ないし、薬でもないから個人でも取り扱いしやすいから……」

「ガチの詐欺じゃね―か!!!」


 ウンコマンの親はガチのウンコだった。因果応報かぁ……。


「まぁ、大体わかったわ。ならやることはひとつよ……」

「お?」



「犯人は現場に戻る……! つまり、もう一回レスバするのよ!」

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