とばっちり

「バッカじゃねーのこいつwwwww」


 俺がある日、レスバを仕掛けようとして「いいね」を押した瞬間に見えたもの。

 俺の右目に映ったのは、ある男の部屋だった。


 部屋はどこかのマンションの一室に見える。

 そこで俺の目を引いたのは、壁だ。壁に妙ちくりんな旗が飾ってあったのだ。


 丸い図形に瞳のイラストが入っているロゴだかマークの書かれた旗。

 それがデカデカと飾られている。


 旗の下の方には『イルミネイション日本支部』と書かれていた。


「陰謀論者かー。こりゃ救いようがねーな」


 この「イルミネイション」というのは、世界を牛耳る闇の政府とかなんとかいうやつで、この世界の政治家、銀行、大企業のトップといった連中が、秘密のネットワークを組織していて、影で政府を操っている。


 そんな陰謀論でよく出てくる組織だ。


「陰謀論者乙っと……」


 俺はSNSに対して、男を小馬鹿にするように面白おかしく書き込んだ。


『壁にイルミメイションの旗とか飾ってるだろ。日本支部とか書いちゃってウケるwwwww小学生かな?????😂』


 俺が何でこんなに強気に出れるかと言うと、俺のネットは同級生のハッカーによって秘匿通信となっているからだ。


 もし、何かで探知されたとしても、撒き餌を出せる。


 このレスの発信源を探知したとしても、発信源は俺の家やスマホではなく、おれん家の三軒となりの家になる。


 クソムカつく、中学の時、学校でうんこした俺をウンコマンと呼んだワタナベの家が、このクソリプの発信源ということになるのだ。ガハハ!!


「……お、何かレス返ってきた。はえーよ」


『殺す』


『顔真っ赤wwwウケるwwwww』


「もうちょっとあおってやるか、ん……?」


 次のリプを送ってやろうとした瞬間、もうアカウントが消えていた。

 ブロックでもなくミュートでもなく、即消し?!


「おいおい、オッサン、打たれ弱すぎるんじゃないの?

そんなんで社会人やっていけるのー? プ、まー無職だろうなw」


 そうしてその日のことは忘れかけていたのだが……。



 次の日、ワタナベの家の一家が消えた。

 何も残さず、朝飯の用意をしたまま、家族全員が消えたのだ。

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