でもどうすんの?

「まてまて、落ち着けよミヤマ……本物かどうかはまだわからないぞ。頭の逝っちゃったオッサンが妄想で作った、ただの作りモノかもしれない」


「作り物? たとえば?」

「ほら、陰謀論ばらまいてる連中って、クソみたいな謎資料作るじゃん」

「あー、あれね……なんか人工地震の波長が~とかね」


「何か他に……ミヤマの視界に写ってるもんで、わかりそうな事、ないか?」


「うーん……あ! これ、メモ帳とかじゃなくて、ブラウザで表示してるみたいだ。上の方に表示されてるアドレスを、メモ帳に写してみるわ」


「もしかしたら、そこから辿れるかもしれないぞ。ひょっとしたら、陰謀論をひろめてるサイトの運営者とかじゃないか?」


「なるほど、このアドレス、ちょっと見てみようぜ」


 俺は右目越しに見えたURLを、目を何度も閉じたり開いたりして確かめながら、ノートパソコンのメモ帳に丸写しした。


 俺がぎこちなくキーボードを叩いて出来上がったアドレスを見た黒井は、ふーむと唸ると、それを使って何やら作業を始める。


「お、うまくいきそう?」

「いやーどうだろ? アドレス見る限りクローズドサイトみたいだな。


「くろーずどさいと?」


「会員制のサイトって言えば、ミヤマにもわかるか? ユーザーIDとパスワードがないと入れないようなウェブサイトのことだよ」


「じゃあ、黒井でも入れない感じ?」


「いや、余裕。セキュリティガバガバだな。URLにユーザーID載せるとか正気か? 前回のログイン履歴から、本人のPCのダミーを用意してと……ほい、いけた」

「さっすが!!」


 黒井のノートパソコンに、あの男が見ていた画面と同じようなものが現れた。


 しかし、当然のことながら、そこに書いてある言葉は全部英語だ。

 そこになんて書いてあるのか、俺にはさっぱりわからなかった。


「黒井先生! さっぱりわかりませんよ!」

「俺だけ読めても意味ないか……いま翻訳かけるわ」



「なんか、ガチっぽいな……」


 人身売買についての情報、臓器売買の情報、このサイトにはそんな情報ばっかり載っている。人種や年齢に応じた価格表やオーダー、そして依頼の充足率。


 これだけだったら嘘乙なんだが、そこにあるリストのひとつが問題だった。


 昨日付けで、新たに入荷されたという、日本人4人分の臓器。年齢、場所、諸々の情報はワタナベ一家と恐ろしいほどに一致している。


 ニュースを見て追加した可能性もあるが、問題はリストの備考欄だ。

 ワタナベのやつの盲腸の手術履歴が書かれていた。


 全国区のニュースで、こんな個人情報が出るはずない。



 このサイト、たぶんマジのやつだ。

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