第10話 初夜
炎系の魔力を練り込んだレッドラメスライム、
水系の魔力を練り込んだブルーラメスライム、
雷系の魔力を練り込んだイエローラメスライム、
風系の魔力を練り込んだグリーンラメスライム、
土系の魔力を練り込んだブラウンラメスライム。
「あれ、もうこんなに外が暗くなってる」
ラメスライムつくりに夢中になっていていつの間にか外は暗くなっていた。それに気がつかなかった理由はただ1つ
「…………きゅぴ?」
「きゅっ……きゅっ!!」
目の前ではしゃいでいるキラキラと輝くラメスライムたちが部屋を照らしていたからだ。これからどうしようか。家に帰ろうか。いや、外も暗くなりつつある。今から帰るのは危険だろう。あたしだけであれば途中で死のうとどうでも良いけれど、今のあたしの命は契約の指輪でリューと繋がっている。あたしが死ねば、リューも死んでしまう。とりあえず今日はここに泊ることにしよう。
「もうこんな時間ね。……いつもご飯はどうしてるの?」
「あっ!! そっか……もう夜ごはんの時間だね!」
リューはそう言って部屋の隅にある袋から何かを取り出して机の上に置いた。
『ごとっ!』
「これ……なに?」
「何って、夜ごはんだよ?」
そう言って机の上に置かれたものは見たことのない物体だった。果物だろうか。紫色の得体のしれない物体からは赤い液体が流れ出ている。
『しゃり……しゃり……』
差し出された果実のような物体をあたしはリューと一緒にもくもくと食べる。味は見た目ほどには悪くない。が、特においしいという味でもなかった。
「……いつもこんなものを食べてるの?」
「え? うん、そうだけど……?」
「…………そう」
大丈夫なのだろうか? 毎日こんなものを食べていて。魔王になると言いつつこんな粗末な食事ばかり食べていてはとても魔王になどなれないのではないだろうか。
そんなことを考え食事を終えた。
食事を終えた後は、身体の汚れを落としたい。不思議なもので先ほどまで死のうとしていた頭の中にはいつものような生活リズムをこなそうと思考が働く。
「お風呂ってあるの?」
「お風呂? あっ、外にあるよ!」
そう言ってリューに案内された先には湖があった。
「……湖じゃない……これ」
「うん! 僕はいつもここで体をきれいにしてるんだ」
「…………そう」
食事に風呂。人間とは違う生活だ。この子は今までこんな生活をしていたのだろうか。今まで以上にこの子のことが気がかりだ。人魔とはもう少し人間に近しい生活をしているはずだ。それなのにこんな森の中で1人でいることに少し疑問が生じた。
が、今日は色々なことがあった。身体もくたくたなあたしは特に余計なことは考えずに今日は寝ることにした。
『ぽよんっ』
「きゅぴ!!」
「ねぇ、可哀想だよ。お家に入れてあげようよ」
「……ダメ。さっ、早く寝るよ」
寝支度も済ませ、1匹だけ明かりとして室内に入れていたレッドラメスライムを外に放り出す。先ほどから10匹もいてうるさかった室内はようやく静かになった。
これからどうするかという具体的な考えは明日にしよう。あたしは1つしかないベッドにリューと2人で横になり眠りにつく。
『かりかりかりかり…………』
「きゅ……きゅぴぃ……きゅ、きゅ……」
窓の方から何かひっかく音がする。
『ドスドスドスドス……』
『ガラッ』
「きゅ!」
「ふぅぅうううううううう!!!」
「きゅ……きゅぴぃ……」
あたしはリューに見られないようにラメスライムたちを睨みつけて威嚇する。威嚇されたラメスライムたちは皆諦めたように小屋の周囲から離れていった。少し可哀想だがあのキラキラした明かりが部屋の中にあったらぐっすりと眠れない。あのきらきらしたラメスライムたちが森の中を闊歩しているのは少し心配だが、こんな夜に森にくる冒険者もいないだろう。
『ガラッ……ぱたんっ』
「ねぇ、ルーニャ。今のってラメスライムたち……」
「気のせいじゃない? ラメスライムたちは夜の散歩に繰り出してるはずよ?」
「……そっか」
うるさいラメスライムを散らし、あたしは再びベッドに入った。
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