第8話 スライム強化
「……はぁ」
部屋の中でリューが深くため息をついた。結局、ギルドからもらった配下モンスターはスライム、ゴブリン、キラービーの3種類。ゴブリンとキラービーは後で配給されるということでギルドからはとりあえず10匹のスライムを袋詰めにして持って帰って来た。
「僕……弱いのかなぁ…………。スライム、ゴブリン、キラービーしかもらえなかった……」
「そ、そんなことないよ!!」
そう呟くリューをあたしは元気づけようとした。が、そんなリューを見て思わず思ってしまった。
(細い腕だなぁ…………)
リューはリュゲルドの子だ。悪口は正直言いたくはない。が、それが正直な感想だった。こんな細い腕に最弱のモンスターたちだけではあっという間に冒険者たちに
(……どうしたものか。。)
「キュピーー!!」
「キュ、キュ、キュッピィ!!」
机の上では袋詰めして持ち帰って来たスライムたちがはしゃいでいる。
今いるのはスライム10匹。もし今冒険者がこの森にやってきたのならおしまいだろう。かと言ってゴブリン、キラービーがいても結果は同じ。なんせ弱すぎる。あのミノタウロス……リューに実績がないとか言ってたけど本当にそうなのだろうか。
もう帰ってきてしまっているので確認はできないがもう少し問い詰めれば良かった。過ぎたことは仕方がないのであたしは今、出来ることを考える。
(…………強化。。)
あたしの頭に『強化』の2文字が浮かんだ。『強化』、それは言葉の通り物を強くすることだ。ギルドの研究所に勤めていたあたしは冒険者たちの使用する薬品の他に装備品を強化するための研究もしていた。
その時に使っていたものを使えばこのスライムを強化できるかもしれない。が、魔物の改造は重罪だ。以前、研究所のある研究員が魔物を使って自室で実験をしていたのが見つかり処刑された事件があった。
故に人間が魔物を強化するという行為は
「…………はぁ~~。。」
ひたすらに部屋で落ち込むリューを見ているとやはり何かしてあげたい。あたしは人魔化していて今は人間じゃない。人間じゃない今のあたしなら、そんな禁忌の行為に手を出してもいいはずだ。あたしは覚悟を決める。
(これをつかおう……)
あたしは意を決し、うつむくリューに声をかける。
「ねぇ、リュー。これをスライムたちに使ってみましょう」
「……なに? それ……?」
「これは
「
リューは興味深そうにあたしの手にある魔法粉を見つめている。
「そう。これは冒険者たちの武器を強化するためのものなの。これを武器に練り込むと炎属性や水属性の技が使えるようになるのよ」
「そ、そうなの!? すごい! ……けど、それをどうするの?」
「ふふっ。こうするの♪」
不思議そうに
『ぱらぱらぱら』
「キュピ? ……キュ、キュビィイイイ!!」
「あっ、こら!! 逃げない!!」
そしてこれを机の上ではしゃいでいたスライムのうちの1匹の頭上にふりかけた。
慌てて目の前から大急ぎで逃げようとするスライムを捕獲し、続いてスライムの上にまぶした魔法粉を練り込んでゆく。
『ぎゅうううぅううううう!!』
「きゅ! キュピィイイイイイ!!」
「えっ、ちょ、ちょっとルーニャ何してんの!?」
突然のあたしの行動にリューは慌ててスライムたちに駆け寄って来る。
「大丈夫大丈夫! まぁ、見てて……ふんっ、ふんっ!!」
「キュ、キュピ………キュ。 ………ケホッ!」
『ボウッ!!』
「やった!! 成功しそう!」
あたしが赤い
「うわぁ、何これ……すごい。ねぇ、ルーニャ! 今、このスライム炎はいたよね!?」
「ふふっ、だから言ったでしょ? これがこの魔法粉の力なの。ほらっ、リューもこの魔法粉を他のスライムに練り込んで」
「う、うん」
あたしはリューと2人でスライムたちにラメを念入りに練り込んでいく。
子供の頃を思い出す。小さい頃はよく母とこうやってパン作りをしていたこともあった。机の上で練っているスライムたちは上下左右と縦横無尽に形を変えている。
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