岩と風

 ちょうど四十話ほど読んだ。もっと読みたいが、時間がないので区切りにしてこのレビューコメントを書くことにした。

 プロレスにはショー・ビジネスとしての一面がある。ただし、真剣勝負かつ命がけのショーでもある。体重三桁キロのレスラーが、ジャンピングニーパッドをみぞおちに決めたところでも想像したらすぐわかるだろう。

 そんな危険な職業に人生の全てを賭けてきた主人公でも、ゼニカネだのショーとしての衰退だので苦境に陥ることはある。

 本作は、テレビゲームにでてくるような地下迷宮が仮に実在したらという前提で物語が進む。

 地下迷宮のちの字も知らなかった主人公が、これまでに培った技と力とショー精神の限りを尽くして戦う様子はまさに手に汗握る緊張感がみなぎる。同時に痛快でもある。

 主人公の養女(?)もまた、主人公の盟友にして亡き父の衣鉢を継ぐ天才レスラーとして活躍する。いや、間違った。天才美少女レスラーだった。

 本作はしかし、単なる地下迷宮格闘技小説で終始しない。主人公達の活躍を記録し配信する伝導者は、なにやら全く別個に過去の因縁を引きずっている。

 どうも臭う、この因縁が。物語の先行き(についての推量)をわざわざ明かすのは野暮であるから差し控えるが、大いなる仕掛けが胎動しつつあるのではないか。

 既筆の残り、さらには今後新たに加えられる続きを楽しみにしている。

 必読本作。

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