好きで、嫌いで、悔しくて、手放せなくて、自分自身で、呼吸で

主人公は、口では才能の前に諦めたと言っている。だがどう見ても諦めていない。彼女の心は傷つきながらも燃えているのだ。
才能の差を思い知って悔しくても小説を書くことを辞められない彼女は、小説を書くのが「好き」とかそういう次元の単純な気持ちではないはずだ。
好きで、嫌いで、悔しくて、手放せなくて、自分自身で、呼吸で。
才能がない程度のことで自分の内側から小説が無くなるような、簡単な話ではないはずだ。
才能なんてものはたまたま秀でていた能力の一つに過ぎない。
環境なんてものはたまたま手に入ったものに過ぎない。
恵まれてるアイツも、ただ漫然と生きていたらただの人に成り下がるのだ。
だから、天才じゃないと涙を流すことがあっても、自分は足りないものばかりだと唇を噛みしめる夜があっても、前に進める人間が一番強くて美しい。
立ち止まってもいい、休んでもいい。
また歩き出せたならそれでいい。
歩き続ける人間が美しい。

その他のおすすめレビュー

宮下愚弟さんの他のおすすめレビュー58