敵を倒すのは簡単だ。
一方で生まれた命を育み育てるには難敵だ。
親がおらずとも子は育つというが、それはあくまで干渉せずに見守るという意味。
生まれた赤子は言葉を発せず、自力で自由に動けない。かといってほんの少しの段差で躓き命を落とすリスクがある。
か弱い存在を育てるのが親であるが、子を育てるにはお金・時間とあれこれかかる。
もう模写が現実でも壁となる問題をファンタジーに落とし込んでいるリアリティー。
子供が育つのに、どれほどの時間か必要か、水やれば育つ植物と断固違う。
夫婦二人三脚で子育なんて聞こえはいいが、下手に育休とれば今後の出世に響く。
出世に響けば収入に響き、子の養育に響く。
実際、取ったせいで社内で冷遇された、給料下げられたとリアル話に暇がない。
本当にファンタジーなのにリアリティーな作品である。
これは、私たちがいる世界とは遠く離れた、どこかに存在するかもしれない異世界の物語。
でも、今時の子持ちには「あ〜なんか、これ知ってる……」であり、もう次の出産予定もない身には、妻子のために育休取得を目指す勇者はちょっとだけ羨ましいのである。
男の育休。
みなさんのまわりではいかがですか。
時代は変わったというけれど、まだまだ育児は女の仕事みたいなところがある。
正直、子供ほしいとか思ってない層には刺さりにくい作品だと思う。
でも、これ、コミカライズして自治体の父親学級とかで配ったらいいと思う。
〝育休とは育児休業であって育児休暇ではありません〟はけだし名言。
他にもこの作品には我々の住む現実世界にも通用する名言がいくつも登場する。
ぜひ読んでキレイゴト抜きの育休最前線のフレーバーを感じてほしい。
(あくまでも異世界だから、リアルはお住まいの自治体に確認せよ)
同時に、これからの世代へのエールでもある。
いやファンタジーでしょ、と言わずに。ちゃんと手続きすればいろんな助けを得られるし、現実はもう少し男の育休に優しくなってきている。
子供産むの、怖くないよ。
そう、ファンタジーだ。
唯一無二の存在から育休を勝ち取るために奮闘するのは物語の中の勇者だけ。
あなたはただ、楽しめばいい!