第四章(七)
「そういえば」
ぽつりといづるが呟くと、めんどくさげな顔のネオリアと不思議そうな顔のオリビアがこちらを見た。
「んあ?」
「どうした、いづるくん。なにか気になることでも?」
そんな二人に、いづるは困ったように辺りを見回して言葉を返す。
「や、これって今現在、学校は元に戻ったなら、みんなは「「戻ってないぞ(ないよ)」」……えっ?」
途中遮って返された言葉に、目を丸くする。そんないづるをネオリアが何言ってんだというような顔でため息混じりに言葉を吐いた。
「げんきょーのこいつ、消えてねぇし。この学校が戻っても、人間達はとりこまれたままなんだから戻るわけないだろ」
「だねぇ、まあ、こんなこともあるある「いやいやいや! ないでしょ! 普通は戻るがセオリーでしょ?!」……とは言ってもね」
オリビアがチラリとふくふくなハムスター(見た目)を見下ろす。
ハムスター姿の、名はろーとなったそれは、今は夢中で滑車を回している。
ハムスター用のハウスが何故かそこに鎮座していた。
その中で楽しそうに滑車を回すハムスター。
どこからともなくオリビアが出したのである。あった方が良いだろうなんて、最初はいやだと抵抗していたハムスター(見た目)はしかし、滑車を見るなり嬉々として回し出したのであった。
「めでたし、めでたし、だろ」
「だよねぇ」
「いやどこが?! はやく、元に戻さないと。みんなを助けないと」
「私は戻さんぞー! こんなっ! ちんまい姿にされてなんたる屈辱っ、せめて私の怖さを思い知るがいい。はーっはは」
かわいい姿のくせに、なんともこ憎たらしいことを言う。しかし、滑車を回すのはやめないハムスター。
いづるはちょっと、イラッとした。
そんな生意気なハムスター、ろーにネオリアが「ほーっ」と呟きながら、ハムスターハウスの前にしゃがみ込むと
「おまえ、まーだ、んなこと言うか? あ? このカゴ逆さまにすんぞっ」
「ふんっ、感謝はしても喜びはしない! 私はもっと、あしがっながっ」
「体はハムスターの本能に忠実なのにねぇ、あっ、写真とろ」
ネオリアとオリビア二人揃って、ハムスターハウスにしゃがみ込む。
がんがんハウスを揺らすネオリア、iPhoneでハムスターなそれの写真撮りまくるオリビア。まったくどうする気もない二人に、いづるはびきりっと青筋をこめかみに浮かべた。
「私のこわ、怖さを知るがいい! 人間どもめー! おまえ、ゆらすなっ。ひかりまぶしっ」
「やーい、やーい」
「ははは、いい顔だよろーくん。どれ、もっと「あー、このあとせっかくめずらしい茶菓子でおやつタイムとか考えてたのになぁ」……ネオリア」
「ふ、いま、やろうとしてたとこだ。おらぁ、ふくふくハム野郎! とっとと取り込んだ奴ら吐けぇ! もどしやがれぇぇ」
「だぁれがっ、ふごごっ!」
ハムスターのそれを鷲掴みにして、ぐるぐる回すネオリアにいいぞと声をかけるオリビア。
似たもの同士が集まるんだなぁ、仲間って。
目を皿にして、二人と一匹を見つめるいづるである。それを言ったら、いづるくんもだよと遥人の声が脳内に聞こえた気がしたが無視をした。
「おい、戻せ! 菓子が食べれなくなるだろっ!」
「さあさあ、一気に吐いていこうか、ろーくん」
「ふぐぐ、菓子などに、屈しぬぅう「それは残念だなぁ。すごい菓子なんだよな、俺だって、今まで食べたことない貴重な」……私にも、くれ、るのか?」
ちろりと、愛くるしいお目目を向けてくるハムスターに、にっこりいづるは微笑んだ。
「もちろん」
「おいおい」
「いづるくん、ろーくんにはいらな「しかたない、今回はお前に免じ、戻してやるっ」」
きらりっ。
ハムスターの、ろーの瞳が赤く輝いた。
途端。
周りから騒がしい声が戻り始めていた。
「あれ? せんせー、時計おかしいじゃん。もうお昼なんだけど」「うそ、中庭見て見なさいよ、なにあれ」「ちょっと、笑っちゃダメよ。ふふ」など、聞こえてくる。
ネオリアたちを見れば、やってやったぞとばかりのドヤ顔である。
いや、堂々と居るけど隠れろよ。見つかれば、不審者扱いだぞ、きっと。
と、ハムスターのろーがネオリアに摘まれながら「おいっ」と言った。
「……なんか、足、はえてるぞ。あそこ」
「あ?」
「あし?」
それにいづるが振り向いて、見た方向には
「「「「たふけぇてくへぇ」」」」
中庭でゴミ箱やら花壇の草木から足をはやした、友人たちの姿だった。
「…………犬◯家の一族かよ」
魔スコット・ガーディアン 文月 想(ふみづき そう) @aon8312a7
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