兄が弟に宛てた、最後のスイカの暗号

 ニューヨークのオフィスで働いている主人公は、服役中だった兄が亡くなったため、唯一の肉親として遺骨を取りに日本へ行きます。

 遺骨の入った骨壺を受け取り、遺品の入った紙袋を手にした弟(=主人公)。彼はタクシーに乗ると、紙袋に一緒に入っていた一枚の便箋を手に取るのです。

 そこには、子どものころに兄との手紙でやり取りをした「シード暗号」(=スイカの断面の種の並びを利用した暗号のこと)が書かれており、主人公はそれを解読することができたのですが、8文字あるうちの5字まで読んで止めてしまうのです。

 兄の残した唯一の言葉を読みたい気持ちがある一方で、彼は兄に恨まれているかもしれないと心のどこかで思っていました。それは兄が服役したのは、自分の犯した過ちが理由だったからです。

 ――そんなはずはない……。

 否定しようとする自分がいるのは、在りし日を思い起こすと仲の良い兄弟でだったからでした。

 そこから主人公は兄と過ごした過去を回顧するのですが、何故の兄は服役することになったのか、そして便箋に書かれた「シード暗号」の意味も明らかになっていきます。

 読む人によって感動する方もいれば、複雑な気持ちになる方もいるとは思いますが、きっとお兄さんが残した暗号には誰もが胸を打たれるのではないかな……と思います。
 気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。