第8話 ただでは起きない

‐8‐


 花粉も飛び交う午後。

「ん? シンガポールから郵便……」

 私は郵便受けを勝手に開けて、由美のいる二階まで持っていった。

「あ、染谷さんからだ」

 あれから由美は、女子高生のようにふくよかさんになった。

 最近猫背気味だ。

 その由美がしゃきーんと背筋を伸ばして叫んだ。

「星の見えるラウンジホテル、宿泊券! やったぁ!」

 はい?

「長野の風光明媚なグランドホテルだよ。スウィートだって! お二人でどうぞってあるよ」

「ほえー」

「彼が設計したんだってさ!」

 スウィートのベッドから、寝転ぶと確かにベッドから星空が見える。

「彼、いい仕事するわね」

「星以外、見るべきものはないけれどね」

 あー、由美は修学旅行もバス移動の北海道にしたもんね。

 わたしはフルーツパーラー行きたくて、沖縄にしたけど。

「決めた。彼に事務所設計してもらう」

「それはいいわね」

 由美……。

 

 

 ‐了‐

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恋とはままならないものなのね れなれな(水木レナ) @rena-rena

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