第7話 春、過ぎる

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「僕が……いけないんです。両親を安心させるためとはいえ、由美さんは何一つ悪くありません!」

「当たり前でしょう! 私を騙したっていうことでしょう」

「本当にすみません」

 えー……思い出したっ。あいつは……。

「まあ、事情を聞いたら、同情する点はある。身代わりとなって両親にご挨拶をしにいくくらいはしてあげる。友達としてね!」

「由美さん……いいんですかっ」

「どうせ、ご両親にお会いする覚悟はしていたからね」

 染谷和彦、奇跡でも見たかのように、まぶし気に由美を見てる。

 惚れたか? いやー、でも。あいつは……。

「私でよかったら」

「ホワミーさんのことは忘れます!」

 そんなに、染谷和彦のこと……好きだったんだね。そんなセリフ、相手に背を向けて言う由美じゃあなかったのに。悲しいんだ。由美、私まで泣きそうよ!


 数日部屋に閉じこもっていた、由美は出てきた。

 しばらくネットからも離れていたらしい。

 その時にそのDMが目に入ったという。

「これ以上、迷惑をかけられないから、海外へ移住する。両親にはこのまま……だそうよ」

「でもさ、由美。あいつは……」

「あいつって言わないで!」

 そういうと由美は背を向けて、窓から見える空を眺めた。泣いてるんだと思う。すぐに、ごしっと目元をこすって。

「あっちで幸せになれるといいね……」

 ふり返った彼女は無理に微笑んでいた。痛々しいなあ。

「あいつ……染谷和彦はさ、サロンの常連だったんだよ。だから、私のことも知っていたし、反応したんだと思う」

「じゃあ、お金持ちだったって事?」

 風の吹く音が強くつよく耳朶を打った。窓枠が揺さぶられて鳴る。春だ。でも、由美のそれは去っていった春だ。

「肝心なのは、彼は女を愛せない質の男だったってこと。詳しくは言えないけれど」

「セクマイかぁ」

「親も心配するわよねえ」

 由美、くすっと笑い。

「なあんだ。女たらしじゃないじゃん」

「そこなの? 由美にとって救いになるの?」

「もちろん。だって愛されなかったのは、私だからじゃないんだもの」

 そんなものかぁ。

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