第6話 ライラ視点

「ライラ、俺、この国を守る勇者になれるかな」

「ケンタ様、もちろんでございます。さあ、この指輪は婚約指輪と思って、はめて下さいませ・・・」

「ライラ!」


・・・・

「フフフフフフフ、アハハハハハハ、はめたわね!」

「ライラ!どうしたんだ」

「王女殿下と呼びなさい!この異世界の野蛮人が!」


・・・・・


「今日から、王女殿下とお呼びすること!王女殿下が話しかける前に、話しかけてはいけない!いいな」


「そんな・・・ライラさん。一体、どうしたの?」


バシ!


あまりの豹変ぶりに、クラスを代表して、たずねた委員長が打ち据えられた。


【緊縛!】

魔導師が号令をかけると、皆は硬直する。


「フン、隷属魔法、皆、かけたであろう?これから、訓練を受けて、魔王軍と戦ってもらう。

 魔族領の魔石鉱山を、3ヶ月後の国王陛下の誕生日までに、プレゼントするのじゃ!」


「返事をしろ!」


「「「「はい!」」」


彼らに施された訓練は、殴る。蹴るで強制されるものだ。



「そう言えば、28番はどうした。帰って来ておるか?あやつには買い手がついておる」


「・・・それが、沼で反応がありました。恐らく、自殺したものかと・・・」


「冒険者ギルド、商業ギルドに、仕事を与えないように、言いつけておいたからな。

 まあ、良い。一体ぐらい・・・いいか」


☆数週間後


とんでもない報告が来よった。

「大変でございます。王都において、見たことのない商品があふれています!」

「何?」


献上された商品は、高価なミスリムや、オリハルコンで作られた鍋だと・・・・


「正直に、申し上げますと、王女殿下の古代遺跡鉱山より出土する金属類よりも・・・遙かに質が良く」


「ええい、出所を探せ!」

「「「はい!」」


ふざけたことに、精霊サンタと名乗る者が、スラム街で売っているそうだ。


しかも、凶報は続く。


「塩、胡椒、これも、遙かに質が良いものが出回っています!」


「大変でございます。貨幣が足りません!」

「ええい。ドワーフども何をやっている!」

「それが、改悪・・いえ、改鋳を嫌がって、出国しました!」

「ええい。何でも良いから、作り出せ!」


対応に、追われ、精霊サンタの手がかりもなく、勇者どもの訓練を忘れておった。


そして、やっと、28番に関係する報告がやって来た。


「大変でございます。28番がテストで召喚したアスファルトと云う物は・・・我国の古代遺跡鉱山の地層で出る物と同じであると、アカデミーから報告が来ました!」


「遅いわ!・・・・あの日の、28番の様子を調べろ!奴は死んではおらん。奴が召喚しているのに違いない!」


・・・・


「はい、私はあの日、丁寧に翻意するように言いました。大事な商品ですからね。しかし、28番だけは、頑なに拒否し、位置情報を知らせるペンダントを渡しました」


「うむ。ドメル神官殿・・そこまでは把握している」


「はい、それで、着替えるように促しました。あの服は、この国では、その刺激的ですからね。

 猫族のメイド、ミーシャに言いつけました」


「獣人族だと・・・」


獣人族と、スラム、裏組織はつながっている。


そして、すぐに、メイド長を呼びつけた。


「ミーシャをすぐに出せ」


「それが・・・ミーシャを買いたいと言う人族が来て、売りました。金貨5枚です。下女にも出来ない獣人族・・良い値だと判断しました」


「嘘を申すな。真偽魔法をかけるぞ!」

「ヒィ、本当は10枚でございました!」


「フン、そうじゃないが、褒美に、斬ってやろうぞ。ケンタ、この女を斬れ!」

「はい、王女殿下!」


バスン!


これで、つながった。

あの28番が、どのような手段を用いたか分からないが、獣人族と、裏組織を味方につけたな。


そして、我は、護衛にケンタと騎士数名を連れて、裏組織の情報屋に行った。


ドスン!

「お、金貨、箱ごとですか?・・・・何の情報ですかネ」


「あの商品はどこから、入ってくる!教えろ!」


「ヒヒヒヒ、価値の下がった金貨ですが、まあ、良いでしょう。闇の森で、交易をしていますネ

 あちらさんが、物を置いていって、私らが金を置き・・」


「細かい取引方法はどうでも良い!場所を示せ!」


「ヒヒヒヒ、ここです」


☆魔族領


「お、アズサ、情報網にかかった闇の森だ。騎士団が来るぞ!」


「了解です!出撃します」


「俺も行くぜ!」


☆闇の森、交易日


闇の森に集まった騎士団は、獣人族が置いた荷物を物色する。


「待て!指揮官直々に臨検する。お前らは触るな」


「チィ、横取りするつもりだぜ」

「シィ、聞こえるぜ」


この国は長いことを対魔族戦争を勇者に任せていた。

彼らは気が付かない。相手は、自分たちよりも上手である可能性すら思い浮かばなかった。

相手は獣人族と思っていた。


「フフフフ、聞けばお宝ではないか?戦利品は指揮官の正統なる権利・・・」


箱を開けた瞬間、閃光が発し、爆音が響く。


ドカーーーーーーーーン


それと同時に、三方向から銃撃された。


パンパンパン!


「ヒィ、逃げろ」


しかし、唯一、攻撃のされない場所に殺到した騎士達の横から、ミニミ軽機関銃が火をふいた。


パン・・・パパパパパパパパパパパン!


「攻撃破砕射撃・・・逃亡兵ですが、横からだと・・よく当たる」


「オルト隊員、油断は禁物よ。相手が気が付いて、弓矢が飛んでくるかも知れない。適時、移動せよ」


「了解!」


・・・無線で指示を出した。事実、機関銃の銃座は、ガッチリ陣地を構築するか。移動できるように軽易に作るべきかで、意見が分かれているらしいわ。


全滅したら、死霊使いの骸骨博士さんが、死体を動かして、埋葬する。

合理的だ。


初めての戦は、私たちが勝ったが、この先、現代軍の存在は、隠蔽はできないだろう・・・


・・・・


☆次の日


ライラ殿下に、衝撃の報告が来た。


「全滅じゃと!」

「分りません。しかし、死体がないのです」


・・・ウムム、ラチがあかない。


それなら、妾が直接、出向いてやろう。


「陛下!騎士団をお貸し下さい」

「最近、貴様は、たるんでおらんか?まあよい。戦利品を寄越せよ」

「御意!」


・・・自分では何もやらないくせに、


そして、情報網に引っかかった28番の出没先に、冒険者を囮に使って、騎士団で殲滅しようとしたが、失敗した。

妾は、右腕を失い。


王都に帰還しようとしたら、煙が見える。


「王都が、陥落したのか?そんな馬鹿な」

「殿下!敵です!」


「「「誰か!」」」


「ヒィ、妾は、降伏する!あの28番・・いや、ササキ殿に合わせてくれ!妾は役に立つぞ!」


・・・魔族は直接統治を嫌う。

なら、妾が、占領国のトップになれる可能性がある。

口なら、どうとでも言えるわ。


☆王城、謁見の間


「ササキ殿、妾は貴殿の下につく。この国を統治させて下され」


ササキの隣に、箱がある。金貨を運ぶ物じゃ。

金貨で妾を籠絡しようとするのか?

ウシシシッ、僥倖、初めは大人しく従うふりをして、時機を見て、追い落としてやる。

ササキの地位に取って代ろうぞ。



「う~む。それはいいわね。分りました。私は貴女を買っていたのよ」


「は、有難うございます」


・・・そうじゃ。実質、国を動かしていたのは妾じゃ。


「貴方に間接統治してもらうにあたって、敵対勢力はありますか?魔族の支配を完璧にしたい」


・・・ほお、そこまでしてくれるのか。僥倖!


「王国、北東に、アリス一派がございます。あやつの顔に欺されて、農民どもが味方しております。

是非、異世界の武器で殺して下さいませ」


パカ


ササキは、箱をあけよる。

箱の中は、やっぱり、金貨じゃ。

あれは不純物の少ない。女神信仰圏の金貨に違いない。

くれるというのか?


妾は、箱に近づく。ササキは何も言わない。

ササッと道をあけよる。

金貨、金貨・・・


妾は左手で金貨をすくおうとしたが、


バン!

「キャアアアアーーー何をなさるのですかぁ?!」


箱の蓋をしめ。左手が挟まれた。骨折したじゃない!


「あれ~、私はあげると言ってないわ。見せただけ・・魔王軍のお金に手をつけるなんて、やっぱり、いらないわ。

処刑ね」


「ヒィ、嘘つき!」


「・・・・嘘付きに言われるなんて、褒められたと思っておきましょう。

連れて行きなさい」


「了解!」


「ヒィ、平民が触るでない!」


ライラは、他の精霊王国首脳部と共に処刑されることになる。





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