第4話 銃召喚
「ヒヒヒヒヒヒ、コミュニティの幹部、精霊アズサ様がお呼びだ。こっちに来い」
「ヒィ、鹿獣人が何故?」
「ヒィ、赤い精霊だ。怖いよー」
・・・今、兎の獣人の子を連れて来てもらった。私の格好は、サンタさんの帽子に、上衣はサンタさんの衣装、下はこの国の踝まで裾があるスカート。
ミニスカサンタさんの格好は、この国ではタブーだ。多分、痴女扱いされるであろう。
「ヘイ、私は精霊サンタだよ。良い子の君に、プレゼントだ!」
「エッ、有難う」
・・・積み木やボールなどのオモチャと、鍋や調理器具の入った袋を渡す。
サンタさんをイメージし、鹿の獣人の人に、子供を呼ぶように、仕事を依頼したが、中々、凶悪な顔をしていらっしゃる。顔に傷がついている。
何故、こうなったか。
私は、この王都スラム街に、身を潜めてから、情報集めと、自分の能力について、調べた。
この国は人族至上主義、人の中には、獣人族や、私たち召喚された日本人は含まれていない過酷な世界。
私の能力は、等価召喚、召喚には、対価が必要で、その対価のおかげで、召喚元の矛盾を解決する。つまり、塩を銅貨で召喚したら、日本で塩が消えずに、こちらの世界に呼び寄せることが出来る。
つまり、在庫元が減らない通販だ。物限定、日本国の物限定とされている。
きっかけは潜伏先のミーシャちゃんのお母さんの家での出来事。
「お母さん。鍋から水が漏れているよ」
「まあ、大変。もう、薄くて修理できないわ。どうしよう。どうしよう」
私は、ピンと来た。
「お母さん。鍋を貸して下さい。召喚、エイ!」
ピカと光とともに、鍋が消え。日本製の鍋が出て来た。
古鉄は、結構高く売れると聞いたことがある。対価は、お金でなくても良いのは城でテスト済み。
「ワー、すごい、お鍋が現われた!」
「お姉ちゃん。すごい!」
・・・フフフ、もっと言って!
と更に、調子に乗って、ご近所さんの古いお鍋や道具を日本製の新しい道具に変えていった。
もう、大人気、顔役のガオスさんにも知れ渡ることになる。
「これ、もっと出せない?商業ギルドに売れるルートを持っているぜ」
・・・話によると、獣人族や私が商業ギルドに行っても相手にされない。良い商品を持って行っても買いたたかれる。酷い場合取り上げられるそうだ。
王都市民の反応を見れば、私は召喚獣扱い。ミーシャちゃんも誘拐されて城に売られた。
そうだろう。「方法は?」
「人族の裏組織に依頼する。取り分、1:1:1で、アズサ、裏組織、獣人のコミュニティだが・・いいか?」
「いいです。それでお願いします。あの、このネックレス売れますか?お城で渡されたものです。豪邸が買える価値だと言ってました」
「やめておけ。城絡みだと足がつく。多分、商業ギルドに話が出回っているぞ」
「分かりました」
なら、沼地にポイ!だ。
ガオスさんが集めた古鉄を対価に、召喚を始めたら、大反響だ。
この世界、未知の魔法があるが、文明度は低い。日本の鍋やヤカンなどが、ミスリムやオリハルコンとして認知されている。
塩や、胡椒も、定番で高値で取引される。
数週間後に、私の元には、大金が入ってきた。日本円にして、数千万円ほどだ。
「アズサ、すごいな。もっと、欲しいって言ってるぞ!何か特別な道具はないか?」
「オ~~ホホホホホホ、では、スコップや鍬などはいかがでしょうか?」
しかし、これは私の力ではない。努力して得た力ではない。
慎ましい生活をしているミーシャちゃん一家たちの横で、スキルがあるだけで大儲けしている私がいるのもおかしい。いつか出て行かなければいかないだろう。
だから、獣人族の人たちに、利益の配分、お裾分けをしたい。
とガオスさんに相談した。
「難しいな。恩恵を特権と勘違いし始めたら、厄介だぞ。人ってな簡単に堕落するんだ。
なら、お祭りをやって、パーと配ったら?精霊は気まぐれだ。それなら、突然、プレゼントをやめても、精霊だから、仕方ないなになるぞ。
しかし、今の格好ではだめだ。普通の人族みたいだ。ほら、アズサも精霊の端くれなら、パーンと精霊ぽい姿に変身できないか?それかプレゼントを空から降らすとか?」
「いや、私、人族ですよ」
「嘘言え。そんな不思議な物を出せる人族なんて、いないぞ!」
と言われてもな。
そこで、サンタを思いついた。
サンタさんの格好をして、プレゼントを配れば、問題無し。
しかし、トナカイをイメージして、鹿獣人の方にお伴をお願いしたら、皆は怖がる。
赤い服もこの国では一般的ではないようだ。
「ヒィ、血まみれのアズサ様だ!あの服は返り血を浴びても目立たないように・・・」
「違うわ!・・いえ、違いましてよ。私は精霊サンタよ。オホホホホ、良い子を見るとプレゼントを渡したくなりますわ」
「ヒィ・・・有難う」
☆☆☆
「ミヤさん。これ、下宿代です・・」
「ヒィ」
金貨の入った袋を渡したら、ミーシャちゃんのお母さんの尻尾がボォとなる。
「ミーシャの友達に、そんなに、もらえません・・・銀貨二枚で結構です」
「もう、一声、金貨一枚」
・・・結局、金貨の半分、月に銀貨5枚を受け取ってもらうことになった。
????
ここで、お母さんの「ミーシャの友達」の言葉で、思いつく。もしかして、ミーシャちゃんを買えないかな?日本では倫理的にはアウトだが。この世界では、合法だ。
恩を受けたのなら、返したい。
「ああ、出来るぜ。金貨10枚もメイド長に渡せば売るだろう。この場合、金貨20枚必要になるぜ。もう10枚は、裏組織への依頼料だ」
「あれ、獣人のコミュニティに渡す分は?」
「いらないぜ。仲間を買い戻すのに手数料は取らない」
「狼気がある・・・すごい」
「何だそれ」
・・・ミーシャちゃんが来るまでしばらくかかるそうだ。
しかし、この商品の出所を探りに、城の兵士達がスラムまで、やってくるようになった。
「お姉ちゃん!隠れて」
弟妹君たちに、連れられて、隠し場所に行く。
ダミーの防火水樽をどかして、地下への階段を下る。
半地下室だ。他の子供達もいる。
外から、声がもれ聞こえてくる。
「この商品の出所はここだと分かっている。精霊サンタはどこにいる?」
「ヘイ、精霊サンタ殿は、ソリに乗って、空を飛んでやってきます。不定期ですね」
「フン、次来たら、隠し立てをすることなく、城に報告しろよ」
「もちろんでさ」
・・・あれ、何で、弟妹君や、他の獣人族の子供も隠れるの?
「お姉ちゃん。人族は、獣人族の子供を誘拐する習性があるの」
・・・うわ、いろいろ否定しづらいな。
私がいると、迷惑が掛かる。
外に出なければ行けない。日本に帰る方法も探さなければいけない。
ガオスさんに相談だ。
「そりゃ、安全な行き先なんてな。裏組織の親分さんに聞いてみよう」
そして、次の日には、やって来た。ヨドムさんという小太りしたおっさんだ。
「ヒヒヒヒ、この娘が・・・あ、なるほど、ワナを見抜いた勇者様ですね。どうですか?私の養子になりませんか?
安全な場所で商品を召喚できますよ。私はこれでも男爵位を持ってます」
「いや、お断りします・・」
「親分、真面目に相談に乗って下さいな」
「まあ、良いでしょう。儲けさせて頂いたのから、相談料は無料で良いですよ。
お勧めは、女神信仰圏です。一番近い場所で、一月の距離で、南にありますネ。女神教では、勇者は対魔王の先兵です。転生者は歓迎されますが・・・この国を横断しなければなりません。身バレの危険がありますネ」
「一月・・・」
・・・金を取るつもりだったのか?油断ならない。
それに、無理だ。この黒髪黒目が目立つことは、王都市民の反応で分かった。
「もう一つあります。一週間の距離、魔王軍です。魔王軍は召喚された異世界人の投降を呼びかけています」
・・・どうしようか?魔王軍の出没地域を教えてもらったが、
魔王軍は、人族の敵だ。イメージ的に良くない。
迷っていると、ヨドムさんは、トンデモないことを言った。
「おっと、ここでは、極秘中の極秘ですが・・魔王の名前は「アキラ」です。ピンと来ましたか?」
「!!!日本人の名前・・もしかして、転生者」
「そりゃ、分かりません。私には異世界の人の名前など分かりませんからね」
☆数日後
私は武器の召喚を行うと決意した。召喚はイメージ出来たものしか出来ない。
「博物館で見た銃は、鉄と木で出来た的なものだった」
「召喚!」
・・・銀貨25枚ぐらいで出て来た。
64式自動小銃と刻印されている。
銃の右側面に、小さなレバーがついている。それぞれ、「ア」「タ」「レ」と書かれている。
「アタレ」験を担いでいるの?
「ア」の位置では引き金が引けない。「ア」は、安全装置だろう。
「タ」と「レ」にすると、引き金は引ける。
「タ」と「レ」の違いが分からない。
「あ、銃弾・・・も必要だ」
弾は、紙で出来た箱に入っていた。
「どうやって、入れるのよ」
銃の右側面の下の方に、ポッチがあった。そこを押すと、黒い鉄の箱が落ちた。
構造上、その黒い箱に、弾を入れることが何となく検討がついた。
それに、弾が入る。
バネが強力で、私の力では、弾を入れるのは、両膝で、箱を押さえて、両手で弾を押し込んだ。
「入るものね。合計20発か」
そして、その箱を、銃につける。
カチャ
と小さな音が聞こえた。
「試射をしよう・・・ここでは、危ないから、野原に行って」
すると、遠くから声が聞こえてきた。
「ミーシャが帰って来たぞ!」
エ、ミーシャちゃん。
物陰に隠れて見る。
裏組織の怖い人に連れられて、尻尾がボォとなっている。
恐怖しているようだが、家族の声で尻尾が普通になった。
「ミーシャ!」
「「お姉ちゃん!」」
エモい。エモい。4人で抱き合っている。
寂しいけど、この家に、お姉ちゃんは二人はいらない。
私は踵を返し。この集落を出る。魔王軍に行くと決めた。
フードを被って、銃を背負い。食料は途中で召喚すれば良いだろう。
☆☆☆一週間後
「ヒヒヒヒヒヒ、お、お前、女だな!」
・・・魔王軍出没地帯前で、冒険者たち6人に囲まれた。
「「「ジャーンケンポン!」」」
「エへへへへ、俺が一番だ!」
・・・こいつら、私をレイプする気だ。
しかも、私が抵抗するとは微塵も思っていないようだ。
「へへへへへ、こんな所に女一人で来る方が悪い。レイプしてやって、金ももらってやる・・・何だと。抵抗する気か?抵抗しなかったら殺さないでやろうと思ったのに」
私は銃を構えた。ここで銃を使わなければ、いつ使う?
ここは過酷な世界。護衛も無しで歩くとこうなると今学習した。
しかし、こちらには銃がある。
レバーをめいいっぱい引いたら、「レ」の位置になった。
左手で、銃を上から押さえ。右手で、グリップを持ち引き金に指をかける。
銃はお腹で押さえる。今、思えば不格好な構え方だ。
「なあ、悪かった。おじちゃん達、悪い事やめるから、その魔道具下ろしな」
・・・嘘だ。顔がニヤニヤしている。なめきっている。
「おじちゃん達、魔王軍の前線に間違って行かないようにギルドから依頼があって、見張りをしていたのよ。お嬢ちゃん。何も知らなそうだから、脅かしただけだ」
・・・本当を織り交ぜて、嘘を言っている。こっそり、後ろに回ろうとしている奴もいる。回り込まれる前に、
今だ!思いっきり引き金を引いた。
・・・・あれ、
カチャと一回音がした。何回引いても弾は出ない。
「何故!弾を入れたのに!」
「何で、脅かすなよ。それ、野郎ども押さえろ」
「「「おう」」
「どうしたよの。お願い!機嫌を治して!」
銃をイジる。銃口を覗く。
銃の真ん中に、突起物があるのに気が付く。掴んで引いてみた。銃の中が見える。
「銃の本体に、弾が入っていない!何故!」
「ヒィ」
やつらは、私のすぐ前に来た。手を伸ばす。
「いいな。その顔!」
私は突起物を離した。
そしたら、
ガチャ、ガチャーン
と音がする。
わずかな隙間から、弾が上がってきたのが見えた。
引き金を引く
パンパンパンパンパンパンパン!
え、一回しか引いていないのに、弾が連続で出た。「レ」って連続の意味?
「「「ギャアアアアアア」」」
前にいた数人は、悲鳴をあげて倒れた。
何人かは、
「いて~~よ。いて~よ」
お腹から腸を出して、地面でのたうち回っている。
「え」
後ろに、男が呆然として立っていた。いつの間にか、回られたようだ。
「良し、もう一回!あれ」
銃から、弾がこぼれ落ちている。これでは、撃てない。
・・・アズサの引いた「レ」は連射の意味である。引き金を引いている時だけ弾が連射で発射される。
しかし、問題は、その速度だ。
戦場でボトルアクションのライフル銃と支援の軽機関銃を一緒に出来ないか?のコンセプトで生まれた自動小銃。
連射の性能は軽機関銃に引けを取らない。故に、カタログ上では、1~2秒で、20発は打ちきり。途中で引き金を戻すときは、ゆっくりと戻さなければ、装弾不良を起こしやすい。
「はあ、はあ、脅かしやがって!」
「ヒィ、後ろ、後ろ」
「あ、何だって、その手は食わない!」
・・・私は思わず男の後ろを指す。
だって、そこには、
「あれ、何で、銃声がしたの?」
「ヒィ、魔王!貴様は、魔王城に籠もっているのでは・・・グハ」
・・・冒険者の首が飛んだ。
「オッス、オラ、魔王アキラ、君が連絡のあった投降勇者かい?」
・・・え、情報がいっているの?
これが、魔王アキラ様との初めての出会いだった。
「ウウウウ、オエ~~~~~」
「酷いな。吐くなんて!失礼だぞ」
・・・夢中で気が付かなかった。私は人殺しをしたのだ。正当防衛なのに、こんな下劣な奴らだったのに、目から涙が頬を伝わる。
「そうか、童貞を卒業したのか・・・うん。うん」
・・・意味不明、私は女ですけど!とは言わない。だいたい文脈で分かる。
童貞卒業・・・戦場で、人を殺したことを指すのであろう。
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