1年前から王都攻略まで
第3話 召喚直後(佐々木梓視点)
私は、佐々木梓、高一、16歳の時に、この世界に来た。
授業中、光が教室を包み。
異世界に、飛ばされたようだ。
この国は精霊王国と言う。
お姫様が出て来て、魔王軍と戦って欲しいと仰る。
皆は、大興奮、しかし、おかしくない?
ここはガス、水道、電気がない世界。私たちは、戦った事がない。進学校では、不良の部類に入る。橋本君だって、怪しい。
何故、武道家や、自衛隊の人じゃないの?
帰りたい。
しかし、私は、鑑定の結果、28/28の価値。
私のジョブは召喚士で、スキルは等価交換、召喚には、対価が必要だ。
試しに、魔石を対価に召喚してみたら、アスファルトが出て来た。
「あちゃ~」と声こそ出てこないが、落胆されたのが分かる。
そして、私は、戦闘に向かないジョブなので、別室に呼ばれた。私の他に三人いる。
皆、女子、ジョブは、踊り子、農民、園芸家だ。
神官のドメルさんが、私たちに説明する。
「残念ながら、貴女たちには、勇者の資格はございません。しかし、召喚したのは我国、精霊国でございます。決して、見捨てたりは致しません・・」
3つの選択肢を提示された。
「貴方たちには三つの選択がございます。
①勇者様たち(同級生)の召使いになる。
②有力貴族を何人か紹介するので、気に入った貴族と養子縁組をし、この国で暮らす
③一週間の扶持を与えるので、このままお城を出て平民として暮らす。冒険者は二年後、生き残る確率は30%なので、注意!」
と言われてもね。
間違いなく③!と思ったよ。
だって、おかしいでしょう。明らかに②を選ばそうと思っている。
①は絶対にいや
②は良い
③は少しマシだ。
召喚と言っても、誘拐だ。こいつらの言うことは信用できない!
しかし、クラスメイト3名は、「②だね」「②しかないよ」と小声でチラホラ言っている。
「私は③を希望します」
先手必勝、私、佐々木梓は③を希望しますと手を挙げて神官に答えた。
皆、空気に流れさて、お願い。
「何と、平民として生きていくですと・・う~~む」
「「「ザキ、②にしよう。一緒にお姫様になろうよ」」」
友人達に、何とかヤバさを伝えようにも、神官の周りに兵士が控えている。ウカツな事は言えない。
だから、「ええ、そう、お姫様は窮屈だよ。冒険者は自由気ままで良いよ。私はごめんだよ。「~~ですわ」て言うのは嫌。3人でパーティーを組もう?ねっ」
と言った。
「「「ハハハハッですわ~って」」」3人は笑って、真意を汲み取ってくれない。
すると、カーテンが開き、部屋の奥から貴族が数人入って来る。
「やあ、異世界の姫君たち。僕を選んでくれたら、生活に苦労させないよ」
「ワシだ。ワシを選んでくれ。1日三食出すぞ!」
「何の。私は侯爵だ。貴女たちは異世界で貧しい生活をしていたのだろう。奴隷を付けよう。貴族令嬢として遇すると約束する」
(やっぱりだ。すぐに出てくるなんて怪しい。しかも「三食」出す。「奴隷」を付ける。気がついて!)
「「「え~~~、迷うな」」」
貴族達は膝を付き。手を差し出して、私を選んでとアピールしている。
(ダメだ)
「君はどうする?今なら②に修正可能だ。当職が責任を持って、素晴らしい貴族を紹介しようぞ。」
(どうする?どうする?どうする?)
「まあ、何ですって、貴族なんて無理ですわ。城下町で素敵な佐〇系男子をゲッチュですわ~」
くるっと廻って、両手の人差し指を平行に差し、昔流行った芸人の真似をした。
親戚の叔父さんが、ケンカの仲裁をするときは、微妙に古い芸人さんの似ていないもの真似をし、更に、場を壊す。
正直イタいが、この世界お笑い芸人は少ないのだろう。精霊国の貴族達は大笑いした。
「「「ははあははははは」」」
「ザキ~、あのね。この国の人は魔王軍に攻められて困っているの。勇者の資格のない私たちの事を考えてくれている。真剣に考えなよ!」
知子は怒った。伝わらないようだ。
「何と貴女は、おもしれ~女だったか?うむ、ならしょうがない。行くが良い。扉を出て、突き当たりの部屋に行きたまえ。このネックレスをあげよう。身分証だ。ネックレスをみせれば、いつでも、城で保護しよう」
神官は強引に私の右手を取り、ネックレスを渡す。
「これは、ミスリルで作られた高価なものだ。豪邸が買える価値があるから、無くさないように」
(これが?どう見ても、合金・・)
「は~~い、分りました。城下町を探索したら~帰って来ますですわ~~~」
右手を挙げて、バイバイしながら、スキップで部屋を出る。
「「はははははははああ、異世界のおもしれ~女もいいな」」
((ザキ、こんなキャラだったっけ?))
☆☆☆
言われた部屋の前に来た。コンコンと軽くノックをして、入室したら、
メイド服を着ている猫の獣人さんがいた。
人間の女の子に猫耳が付いたタイプだ。
髪の毛はアメショのようなブルーに、目は薄い黄金
尻尾がスカートからでていて可愛い。
若干、巻いている。
緊張しているみたいだわ。
「ヒィ、失礼しました。勇者様!」
・・・慌てているわね。やはり、私がここに来るのは想定外。
しかし、耳、人間の耳はついているのだろうか?
あ、人間の耳は付いている。
では頭の上のその可愛いお耳は何のために?
と疑問に思ったら、何か振動のような声が聞こえてくる。
ニゲテ!ニゲテ!ニゲテ!ニゲテ!
その時、同時に、私の心の中で声が聞こえた。
(スキル、翻訳機能、獣人信号解読習得・・・獣人族の簡単な念話を解読できる)
なるほど、もしかして、その耳はテレパシーを発するため?
情報を聞き出したわね。この子の様子から、盗聴されているものとして、動かなければいけないわね。
「初めまして、私はアズサ・ササキ、貴方のお名前は?」
「ミーシャでございます」
「まあ、可愛いお名前」
・・・欲しい情報は安全な行き先だ。冒険者ギルド、商業ギルド?
どこかないかしら。
「ミーシャさん。私、来たばかりでこの国のことを知らないの。良い行き先を教えて下さらない」
「あ、はい。精霊国は、とても、獣人族に良くして頂いてます。人族に仕えて幸せです」
だめだ。やはり、うかつなことは言えないみたいね。
ミーシャちゃんから、着替えるように促される。
何でもこの国では、足を見せて良いのは閨の中、この制服のスカートは、とても刺激的らしい。
踝まであるスカートの平民の服に着替えた。
着替え中、まるで、視線から隠すように、飾ってある絵に背中を向け。私を隠す。
盗み見もされているようね。
あら、ミーシャちゃんが私にスリスリしてきた。
「もし、間違って、獣人族の集落に行ったときのおまじないです。悪い獣人族は仲間と思うでしょう。襲われません。絶対に、城を背にして右に行ってはいけません。右には獣人族の集落があります・・・」
ミギ!ミギ!ミギ!ニゲロ!ニゲロ!
なるほど、私は腰を90度になるまで下げてお礼を言う。
「有難う、ミーシャちゃん・・・」
「最後に、イエネコ族のお話をします。
猫デンデン!という教訓話があります。
デンデンは古い言葉で、各自という意味合いです。
イエネコ族が、危機に遭ったときは、てんでんばらばらに逃げろとの教訓です。・・
イエネコ族は情が厚く、敵に襲われたとき、仲間を助けようとします。
しかし、それが原因で、結果として全滅する事例が多かったのです。
それぞれ、クモの子を散らすように逃げた方が助かる確率が高いとの意味です」
「なるほど、肝に命じるわ」
私は部屋を出た。
・・・クラスメイトは助からないのね。
気にしてはいけない。いけない。
☆☆☆
城門まで来た。兵士にペンダントを見せる。
「お前が城を出る召喚獣・・おっと、勇者様か、絶対に、右に行くなよ。捜索になったら、面倒だ」
「分かりました」
・・・私たちのことを召喚獣、獣と呼ぶのね。
「お、それと、お前は、おもしれー女だってな。何かやれ」
・・・無視だ。
「チッ、貴族様の前でしか芸は出来ないってか?猫獣人なんかに、臭い匂いをつけられたんだってな。臭いからさっさと行け」
パチン!
・・・しまった。思わず手が出てしまった。
兵士の顔をビンタしてしまった。
ミーシャちゃんの悪口は我慢できない。
私が、ここを出られたのは、奇跡に近い。
情報の周りが早い。こいつらは無能ではない。
こうなったら、
「ヘイ、ヘイ、ヘイ、おもしれー女だ。大陸一武道大会だ!」
私は腰を落して、ヘイ、ヘイとカモンと手招きをする。
「この・・・身の程を知らせてやる」
「やめんか!どうせ帰って来る。その時にワビさせればいいではないか?お前も身 の程を知れ」
「は~~~い。身の程を知ります」
寸でのところで、上司が止めに来た。
ここは、私たちを召喚獣と呼ぶ国・・・とにかく、ミーシャちゃんの指示した獣人族の集落に行こう。
私は、隙を見て、城を背にして、右に向かった。
すぐに、道行く人々のヒソヒソ声が聞こえてくる。
「お、召喚獣が、道を歩いているぞ!」
「石を投げてやれ」
「おい、やめておけ。城のペンダントがあるぞ」
「チィ、野良だったら、速攻でさらうのによ」
・・・このペンダントは、城の所有物を表す標識と言うことね。
☆☆☆
獣人族の集落は分かるだろうか?
特徴を聞いておけば良かった。
しかし、一時間ほど歩いたら、
すぐに分かった。
スラム街だ。
私が入ると、野路や、家から獣人族が顔を出す。
半身獣のタイプだ。獣人族は、男は顔まで獣なの?
トラ茶の眼帯をした猫獣人は悪可愛いなと思っていたら、
顔が狼の獣人が私に顔を近づける。
「ヒィ」
ここまで、私はドサ!と押し倒された。ここは動物の王国ではないはずよ。
ここで、レイプ?抵抗する術はない。
しかし、
クンクンクン!鼻を鳴らしている。
「おい、イエネコ族のものはいるか?行方不明のイエネコ族の家族がいる者は、順番に匂いを嗅げ」
「「「おおおお」」」
「いや、名前を知ってますから、お城のミーシャちゃんです。髪は灰色に近いブルーです!」
「おお、ミーシャか。案内してやる」
案内してくれた狼獣人は、ガオスさんといって、ここの顔役だ。
私はミーシャちゃんの家で面倒を見てもらうことになった。
ミーシャちゃんのお母さんは、オレンジの髪に耳がピン!と立っている。
弟君と妹君もそれぞれ可愛い。
あら、お母さんが私を抱擁して、クンクン嗅いでいる。
「グスン・・・グスン、ミーシャ・・匂いを運んでくれてありがとう」
お城でお世話になったこと、命の恩人であることを告げる。
・・・切ない。ミーシャちゃんの境遇は、5年前、10歳の時に、弟妹を連れて散歩をしていたときに、人族にさらわれ、自分が囮になって弟妹を逃がした。それ以来、行方不明だった。
猫デンデンって、自分の経験から来た反省、それとも・・・
考えるのはやめよう。クラスメイトを助けるにしても、まずは、自分がこの世界で暮らしていける力をつけなければならない。
「ミーシャ、親切な行いが出来る立派な子になって、森の精霊様のご加護がありますように」
弟妹たちも目を閉じ黙祷する。
私も、標準的な無宗教の日本人だが、彼らの神に祈った。
私はこの世界のことを知らなすぎる。
ここで、情報を集め、今後のことを決めよう。
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