第7話 精霊王国仕置き

 ライラのカス王家の対抗勢力、アリス一派と会うために、王国北東部に向かう。


 高機動車二台と軽装甲車一台、人員は2個班の20名と、獣人族のミーシャちゃんと・・


 裏社会のドン、ヨドムさんだ。


 彼につなぎをつけてもらった。


 この男、怪しいけど、この件に関しては、信用は出来る。

 何故なら・・・



「さすがですネ、アリス一派を捜し当てるとは・・・アリス様の正体は想像出来ますか?」


「・・・大方、精霊の愛し子でしょう」


「当たりですネ」


 ・・・東北に行くほど、空気が清浄になってきた。

 それに、精霊王国という名だが、精霊がいない。


 もしかして、精霊の愛し子を追い払って、カス王家が、クーデターを起こしたと想像した。公式記録では、王位の禅譲であるが、信用できない。


 狡猾なライラを出し抜いて、ここまで生き抜いたのなら、誰かの助けがあるハズだ。

 それが、この男、ヨドム。彼は、前の政権の貴族だと、魔王軍占領下のヤクーツの王族から聞いた。


 それに、農民は、素朴だ。王都市民とは違う。


 休憩で、ミーシャちゃんに、水くみをしてもらったら、

 村人の親子と遭遇した。


「あっ、大きな猫ちゃんだ!」

「これ、あれは、猫の獣人さんだよ。指さして、ごめんなさいは?」


「ごめんなさい」


 コクッ


 とミーシャちゃんは頭を軽く下げ返答した。


 王都だったら、石を投げられるであろう獣人族・・・


「あ、会見場所についたわ。ここね」

「ええ、そうです」


 一目で、アリスが分った。年の頃、12,3歳、白い服を着て、

 一人、入れる穴の前にちょこんと座っていた。


「あれは・・・」

「はい、私を殺して、穴の中に入れて下さい・・・降伏の作法ですネ、試されるのは・・」


「私ね」


 度量を示さなければならないか・・タダで許してもダメだ。

 器の大きさを計られる。


 しか~し、


 私の器は、水たまりよりも浅いわ!


「私は魔王軍、王都攻略軍長及び魔王陛下の代理人として来ました。貴女が、アリス・グロスターですね」


「はい、私は、アリスです。・・・私の一命を持って、民の助命をお願いします!」


「あい分った!」


 何故か、時代劇風になった。


 そして、アリスの後ろに立ち。剣を、大きく振りかぶる。


「「「「アリス様~~~~」」」」

「「「グスン、グスン、ウワ~~~ン」」


 古い騎士服を来た男たちも土下座してむせび泣いている。


 ああ、ここまで生き延びて来たのね。


「アリス殿、統治に当たって、精霊王国の問題点を教えて下さらない?」


「はい、まずは、王都市民や都市民は投機を覚え労働を忌避しています。対して、農民は素朴です。都市民と農村で対立があります。そして、インフレと戦費で国庫は空でしょう」


 ほお、問題点は分りますか。


「なら、その解決方法は?」


「分りません・・・・」


 アリスちゃんのお年ならそうでしょう。

 問題点は分るが、解決方法は分らない。

 なら、解決は、悪い大人に任せればいいでしょう。


 私は剣を降ろした。


「貴女の命をもらいました。貴女は、精霊王国新女王に即位してもらいます」


「ホエッ!?」


 アリスちゃん。口を丸くして・・・美少女が出してはいけない声を出した。

 頭の上に、「?!」が浮かんでいるな。


「そして、宰相は、ヨドムさん。貴方がやりなさい。ヨドム公爵閣下ですよね」


「謹んでお受けしますネ」


 こいつ・・・バレていることを知らせても、平然としてやがる。

 でも、まあ、いいか。


「命令します。王都を、この近辺に遷都しなさい」


「えっ」

「分りましたネ、これが、最善の方法ですね・・・王都市民を殺す方法です」


「ええ、政治と経済の中心を移します。新たな王都市民は、ここにいる人達になります。これは決定事項です。命令ですよ」


「分りました・・」


 すると、


 ピカッ


 アリスちゃんの周りに野球のボールくらいの光球が数体現われ、クルクル回る。


「スメル、ヤン、ロン・・有難う。私、頑張るわ」


「「「「オオオオオオオオ、アリス様!」」」


 精霊ね。精霊のいない精霊王国だったわね。


 ☆☆☆王城謁見の間


 王城に戻ってきた。


 貴族や市民の有力者、元クラスメイトを集めた。


 私の周りには一個班に護衛してもらっている。


 しかし、まだ、高飛車な態度の者がいた。


「おい、召喚獣よ。我等がいないと国は回らないぞ。魔王陛下に合わせろ!相応しい役職をもらおう」


 魔王軍商売なめられたらおしまい。


「あの発言をした男を撃ちなさい」


「発言をした男、射殺!了解!」


 バン!バン!


「ギャ、ウグ」

「男爵殿!」


 口から血を出して、倒れた。男爵如きが、そんな口をきくなんて、私もなめられたものね。


「佐々木殿、我は錬金術士なり。お役に立てますぞ!」


 あれ、クラスメイトが山名を中心に、ワラワラと壇上に昇ろうとしてくる。

 山名は確か錬金術士?


「あ、それ、足下に撃ってダンスさせなさい。角度に気を付けて」

「「「了解!」」」


 バンバンバン!


「ヒィェ」

「佐々木さん。危ないからやめて~~」


「ギャ、グヘ」


 跳弾が数発、後ろの貴族に当たったか。

 まあ、どうでも良い。


 クラスメイトは捕虜、その分別をつけなければ、示しが付かない致し方無し。


 皆は思い出した。魔王軍とはそういうものだと、

 恐怖で統治する。

 現魔王のアキラ以前の魔王は、略奪と殺すこと以外興味はなかった。


 しかし、略奪が済めば、踵を返し、魔族領の奥地に帰る。


 民がいくら犠牲になっても、避難した貴族は無事だった。


 魔王アキラは、間接統治をする分、質が悪いのではないのか?

 その代理人も劣らず残忍だ。


「あ、それと、カス王家精霊王国は今日をもって、終わりとします。そして、アリス女王のグロスター朝精霊王国になります。

 これは決定事項です。

 召喚に関わった貴族は処刑、それ以外は、興味ありません。」


 皆にとって、大事だが、まるで、今日の予定のように告げた。

だって、私にとってはどうでも良いことですもの。


「あの、質問ですが、扶持はもらえる・・・」


「あれ、撃ちなさい。質問は認めていません」

 ・・・もらえるワケないでしょうが、


「「「了解!」」


「ヒィ」


 バン!


 そして、次は、クラスメイトだ。

貴族を退散させ。クラスメイトに告げた。


「貴方たちに、次の選択肢を与えます

① 新精霊王国の下級官吏となり働くこと。チャンスです。この国のために本当に働けることになります。国庫は空です。お給金は低いけど、民の笑顔はプライスレス!

 

② 魔王軍人族部隊の下働きとなること。3年間下働きをすると、人族部隊入隊の訓練を受けるチャンスか、魔王軍の役人になれる権利を進呈します

 

③ 扶持を与えるので、ここを出て、市井で暮らす。冒険者、商売をするも良し。

 しかし、成功は厳しい」


 ザワザワザワザワ~~


 答えは①か②よ。

 ①は、精霊王国は、精霊との愛し子を大事に扱うと、国が回るシステム。今は厳しくても、すぐに豊かになり。お給金は増えるわ。少しの我慢

 ②は、私が貴方たちを守る。

 ③は、それはないだろう選択肢。


 さあ、皆は・・・・


 相談の結果、クラスメイト全員が③を選んだ・・・・


 小声で、

「佐々木が成功したのだから・・」

「ああ、俺たちも一旗あげるぞ」


 と聞こえて来た。


 私は・・・一応用意した金貨を渡し・・・


「アズサ様!ハンカチを」

「エミリア・・・どうしたの」


 あれ、私は涙を流していた。


 ああ、この世界で、彼らとの今生の別れとなるかもしれないと予感した。




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