第10話 戦争条約

 非公式の話し合いの後、法皇様と聖女様は帰った。

 アルベルト卿は、居残り。


「ヒィ、何で俺が大使なんですかぁ?」

「情報収集じゃないかしら?スパイ」

「スパイしませんって!」



 その後、魔王アキラ様は、サキュバスのマキナさんとの新婚旅行から帰って来た。

 北方の魔族諸族に挨拶も兼ねている。


 まあ、魔王様にお妃様は必要だ。


 しかし、


「マキナちゃん。食事中まで、手をつないでいたら、食べられないぜ」

「フフフフフ、私が食べさせてあげる。ア~~ン」


 チィ、見せつけてやがる。


「アズサ、お前を魔族宰相に任ずる。本条約を結んでこい」

「分りました!」


 ☆☆☆人族、魔族領国境


 歴史的な魔族・人族講和会議が開かれた。


 会議の代表は、

 魔族宰相の私と、法王の全権代理のセイコさんだ。


 人族からは、吟遊詩人が沢山来ている。


「おお、あれが、魔族の代表か、若いな」

「いや、うちの聖女様も・・・・大人の色香があるぞ」


 私は、問いかける。


「聖女殿に、あらためて、女神信仰圏のあり方を教えてもらいたい」


「女神信仰圏にも、獣人族や魔族に対する差別・偏見がございます。

 国同士の戦争もあります。

 しかし、女神教本部を中心にして、失敗を重ねながらも、日々、良い方向に向かうように努力しています。

 外部からの助っ人、勇者召喚は、人為的な召喚を行わないことが誇りです。

 魔族領は如何かしら?」


「魔族領も人為的な異世界召喚は行いません。今まで、人族領を無軌道に攻めていたのは、ひとえに食糧問題です。

 危機が生じると魔王陛下が誕生し、部族をまとめ大規模に侵攻します。

 しかし、それは、誤りです。今は、魔王陛下の元、一致団結して、食糧問題が生じないように、文明化しています」


 ・・・長い話合いの後、正式に条約が調印された。

 講和条約という名ではあるが、内容は

 平和条約ではない。

 戦争条約である。


 名前は、「大規模部隊展開の制限について」である。


「戦争はなくせません。ですから、最小限にすむように、ルールを作りましょう。今はこれが、精一杯ですね」


「ええ、これに同意します」


 女神教の勇者による魔王討伐はなくせない。

 だから、それをしてもらう。


 しかし、大規模な騎士団を投入しての勇者投入は厳禁とする。

 勇者パーティのみ。魔族領に侵攻することを許可する。


 しかし、私たち。魔族は、大部隊で、勇者を迎え撃つことはしない。

 4人の魔族幹部を打ち取ったら、魔王陛下と戦える権利を持つとの取り決めだ。



「アズサ殿、魔道水晶をお送りします。私たちの世界では、ホットラインと言ったかしら」


「ホットライン?ああ、昔の冷戦時代ですね。分りました」


 オロオロ~

「わ、私も教科書でしか知らないわ」

 フン、私は若いのよ!


「それでは、私の方も、贈り物を差し上げます。コスメセットです」


「まあ、有難うございますって、ドランホラン!の無料お試しセット!」


「ごめんなさい。年上の方の化粧品、分からなかったので、お母さんと同じものを贈るりました。

 言ってくれれば、特別に召喚しますよ」


 フン、化粧品も貿易するわよ!

 他にも、貿易の取り決めもされたから。



 ①魔族との貿易は、平民を通してなら黙認


 こちらの強みは肉!魔族は肉が慢性的に不足してるからね。

 人族は、文化的な強みもある。

 文化に染めさせて、弱体化させる目論見もある。


 ②クズ勇者の処理


 時々、召喚される勇者、最近、クズ勇者が多い。

 女神教では、魔族討伐の尖兵、よほどのことがないと罰することもできないし、戦力は馬鹿にならない。


 条約の内容から、


 勇者パーティには、可哀想だけど、自力で旅をしてもらわなければならなくなったわ。


 ・・・・・


 ☆聖王国


 女神様の意図は分らない。時々、とんでもない勇者が召喚される。


「はあ?BBA、俺に、魔王討伐しろって?」

「ウケる~~~~」


 ピキッ


「オホホホ、あちらには、綺麗なダークエルフさんたちがいっぱいいるわ」


「英雄(エース)、行こうぜ!」


 そして、クズ勇者たちは、魔王討伐に旅立った。


 しかし、魔族領国境に入った10キロの地点で、控えるアズサが、500メートル先から撃つ。


 バン!バン!バン!バン!


「ヒィ」

「キャア」


 ・・・・


「条約により、魔族討伐の旅に出たら、ホットラインで通告がある。しかし、何か、不良勇者の処理を任されているような」


「いえ、勇者は、すべからく、魔族領に、ただ、殺しに来るヤカラたちです。

 情けは無用です。ですが、アズサ様1人が、お相手をする必要はないかと」


「そうね。あ、四天王を作るのを忘れていた」


「四天王とは、・・・・なるほど、だた殺しに来る者に対処する役ですね」


「人選は・・・骸骨博士さんに任せます。私は最弱の四天王でいいですが、あっそうだ」


 ・・・・・・


「アズサ殿、何故、私が魔王軍の四天王にならなければ、ならないのだ!」


「アルベルト卿は、堕天使枠です。もし、真面目な勇者が来たら、説得してもらいます。魔族と人族はわかり合えるということを、ホットラインで、既に、了解を取っています。

 このまま、ここにいてもやることないでしょう?お給金も出します」


「ウゥ、分ったが、この黒い衣装着なくてはダメか?」


「フフフフ、悪っぽいイメージです」


 以降、魔王軍に四天王が誕生したが、勇者パーティは、ことごとく、アズサの64式自動小銃により。見えない場所から、討ち取られた。


 勇者の聖剣も使ういとまもなく狙撃され、聖騎士の盾も、聖女の結界も貫き、魔導師の魔法も届かない場所から狙撃される。


 魔王討伐が人族の悲願になるが、


 以降

 小競り合いもあるが、大陸は平和になった。



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異世界自衛隊 山田 勝 @victory_yamada

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