かりんとう!3

鮎崎浪人

第一話

  一


 劇場のステージ中央の最前に、一人の少女がすっくと立っている。

 三百の座席を隙間なく埋め尽くした観客がその少女と対峙している。

 その少女、神希成魅かみき しげみは何ら気おくれする素振りも見せず、それどころか自分がその場の主役であると確信しきった傲慢とも受け取れる表情で、客席全体をゆっくりと見渡した。

 そして、左手を真上にピンと伸ばして視線を集めてから、

「みなさ~ん、大変長らくお待たせしました。

 それでは、みなさんがお待ちかねのアレをやります!」

 そう宣言すると、右手も頭上にかざし、両手でやや丸みを帯びた輪を作った。

「いいですか、『かりんとう』です。

 これ、やりますよ! 

 さっきも言いましたよね。

 みなさん、しっかり覚えてますよね?」

 神希はいったん両手を下ろして膝にピタリと添えた。

 そして、天井を突き抜けていくような真っ直ぐで混じりけのない澄んだ声音で高らかに叫んだ。

「せ~の、『かりんとう!』」

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