家族の絆が紡ぐ、日常の宝物

 短歌集「家族と過ごす時間」は、家族との日常の一コマ一コマが鮮やかに描かれた、心温まる作品です。冬の日の暖かい家庭の光景や、家族が共に過ごす特別な瞬間が短歌という形で繊細に表現されています。

 夫が年に一度だけ焼くイチゴのケーキ、娘が母親に「だっこ」と手を差し伸べる瞬間、病気の母親のために慣れない手でご飯を作る子どもたちの姿。これらのエピソードは、日常の中にある愛情や優しさを感じさせ、読者の心に深く響きます。

 また、家族の絆が強く描かれているだけでなく、コミカルな要素も含まれており、読んでいて微笑ましい気持ちになります。料理に挑戦する夫の姿や、子供たちの無邪気な行動、そしてペットとの楽しい日々が、ユーモアたっぷりに詠まれています。

 一方で、家族との別れや老いと向き合う瞬間も含まれており、切なさや哀愁が漂います。愛する人との別れ、親の老いや死を通じて、人間の生きる意味や命の尊さが静かに語られています。

「家族と過ごす時間」は、読む人の心を温かく包み込む短歌集です。家庭の中で交わされる小さなやり取りや、大切な人との思い出が丁寧に綴られており、家族の絆の強さと深さを改めて感じることができるでしょう。家族との時間の大切さを思い出させてくれる、心に残る一冊です。

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