【短歌】家族と過ごす時間

チョコレートストリート

家族と過ごす時間

冬の日にイチゴのケーキを焼く夫 年に一度私の誕生日


角切りの生のニンジン生玉ねぎ まさかそれサラダ?何見て作った?


レシピ見て料理する夫 でもまずい 「分量は無視。」じゃあなんで見る


「だ?」と手を上げて私を見る娘 「だっこ」と分かるのは私だけ

              

ぽろぽろと涙 それでも慰めにチョコを渡せば「アリガト。」と言う


寝込んでる私のために慣れぬ手でご飯をつくるトマト洗わず


飼い主を超える背丈でじゃれる犬 娘も同じ 乗ると重いぞ


空港のセキュリティゲートを通りぬけ振り返る顔少し不安気


旅立ちの準備に追われ見送った後にようやく気付く 別れに


「晩ご飯何食べたらいい?」長男の電話 初めての一人暮らしの夜


さみしくてかけてきたかと思ったが 反対だった気遣われてた


「今すぐに食べて。」とそばを離れない長男初の帰省のお土産


「三日月よ。」ゆびさす空をじっと見て「……バナナ?」といぶかしむる3歳児


……てんてん」と「はてな」に子供の果てしない伸びしろをみる 老母ははとは違う


この壁の中に父の部屋があると言う だ幻の父と住む母


「父はどこ?」何度も私に問う母に「もう死んだのよ。」言うか言わぬか


延命を拒み終わりを決めた父死にゆく姿最後の生き様


治らないのはしかたないただひとつ医療に願う痛みを取って


骨を海にけと言われたけどできなくて 代わりに花を川に流そう


年老いて死んでもいいんだ子が孫が生きて生まれる命は続く

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