Vendicatore

入夏伊澄

幼少期編

第1話

葛島奏、楓、郁は18歳ながらそのルックスと演技力で女優の第一線で活躍している葛島千里の子供である。

その事実は事務所の中でも極わずかな者しか知らない。

理由は彼女がまだ未成年である事、相手に関係を強要された末に起きてしまったことであるからだ。

もしそんなことを世間に知られれば彼女も事務所も破滅するからである。

真実がどうであれ世間は関係なく彼女を罵倒し破滅に追いやる。

「さすが私の子供ね。3人とも可愛いっ!」

寝ている3人の子供に抱きつく。

「千里、自分の子供が可愛いのは分かるけど仕事だから行くわよ」

千里の従姉妹であり同じ事務所の女優、甘木ゆいが腕を掴み強引に楽屋から連れ出す。

今この二人はかなりの人気で色々な番組でひっぱりだこということもあり事務所が二人をユニット[IRY]として結成させた。

今日はその初仕事の音楽番組だ。

「やっと終わったぁ〜」

「お母さん、かっこよかった」

長男の奏は収録が終わり楽屋に戻ってきた千里へ駆け寄った。

「ありがとう」

「お兄ちゃんだけずるいっ!私もなでなでして、ママ」

「ん、私も」

「もう甘えん坊ね。でも可愛いっ!」

やれやれとゆいが溜息をつくのとほぼ同じタイミングで楽屋の扉がノックされゆいが開ける。

入ってきたのは番組プロデューサーや局の社長などお偉いさんだ。

「いやぁ、素晴らしかったですよ。やはり栗野プロさんに出演オファーしてよかった」

中年くらいの男がゆいと千里にそう呟くが笑顔を見せるゆいとは対照的に千里は少し嫌そうな顔をしていた。

理由は子役の時に色々あって根に持っているかららしい。

「そう言って頂けると社長も喜びます」

「ところでそちらのお子さんは?」

「あ、こ、この子達は、、千聖の兄妹でどうしても間近で見たいというものでつい」

「そうでしたか。もしどちらかの隠し子だったらと恐ろしい想像をしてしまうところでしたよ」

咄嗟にゆいが誤魔化すと男達は納得したように楽屋から出ていった。

「冷や冷やしたね〜」

「冷や冷やした所じゃないっ!本当に危なかったわよっ!もしバレてたら私達の芸能生活が無職生活になっていたわよっ!」

「結果的にバレなかったから大丈夫」

「はぁ、あんたって子はもう」

「危険な橋ほど渡る時興奮する」

「危険な橋なんてレベルじゃないから」

後に神回と呼ばれることをまだ誰も知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る