第6話

今日はお母さんの提案で花火をすることとなった。

お母さんは花火をした事がなく夢だったらしい。

「ずっとしたかったんだよね、花火」

「高校の時は近寄りがたい感じがあって誰にも誘って貰えなかったからね、千里」

「も、もうその話はいいから」

「しかも近寄るなオーラを出してた訳じゃなくて単に眠たかっただけって今でも笑っちゃうわ」

「仕方ないじゃない。だって仕事が多くて全然眠れなかったし」

「お母さんとゆいさんっていつからそんなに仲良いの?」

いつも二人は仲良くて仕事の相談とかもよくしていた。

「私達が仲良くなったのって確か高校の体育の時だよね?」

「先生がペアを作れって言ってたけど私だけ作れなくてその時にゆいに誘われて仲良くなったんだよ」

「あったね。あれがなかったら仲良くなれてないって思うと感慨深い」

「きっとみんなは言うけど、芸能人は辛そうとかこの歳で子供がいて可哀想って。でもね、私は芸能人になったからゆいに出会うことが出来たし、奏と楓、郁が私の子供で本当に良かったと思ってる」

「千里、私もよ」

「お母さん、僕もお母さんの子供に生まれてこれて幸せだよ」

「ママ、私には難しいことはわかんない。でもママはママだよ」

「私も」

「うぅぅぅ、なんていい子達なの。愛してる、奏、楓、郁」

お母さんは号泣ししばらく抱きついた腕を離さなかった。


荷物を車に積め、このまま家に帰る予定だ。

鞄の中を探るが無い。

持ってきていた愛読しているラノベがどこにも無かった。

「お、お母さん、ごめんなさい。別荘の中に忘れ物してきちゃった」

「仕方ないなぁ。ゆい、楓達をお願い」

「はぁーい」

別荘の中へ入り自分がいた場所を重点的に探すが見当たらない。

「おかしいなぁ、ここら辺に置いたはずなのに」

「奏、これかな?」

お母さんの手には愛読しているラノベがあった。

「それっ!ありがとう、お母さん」

「どういたし、、、奏っ!!」

お母さんの叫びと同時に押しのけられ壁に体をぶつける。

「お母さん?」

飛びそうになった意識を無理やり引き戻し目を開けるとお母さんが倒れていた。

腹部から血がドロリと溢れていた。

「よかった。ごめん、ね。怪我してない?」

「僕は大丈夫だからっ!と、とにかく誰か呼ばないとっ!」

「聞いてねぇぞっ!ガキがいるじゃねぇかっ!」

男の怒鳴り声が聞こえ後ろを振り向くと耳と鼻にピアスを開けたいかにもDQNのような男が血のついたナイフを片手に立っていた。

どうやら男は誰かに電話しているようだ。

「逃げなさ、い、奏。貴方だけなら逃げ切れる」

「嫌だっ!そんなの絶対に嫌だっ!」

「依頼に入っていないが見られたのなら仕方ない。死んでもらうぞ、クソガキ」

「う、そ、、だ、、こんなの嘘だよ。返して、、、母さんを返せよッッッ!!」

男に掴みかかるがあっさりと床に叩きつけられ意識が暗転した。

目を覚ますと視界に白い天井が入った。

「こんなの夢に決まってる、、、母さんは生きてる母さんは生きてる母さんは生きてる母さんは生きてる母さんは生きてる」

ゆいさんの話によれば自分が気絶した後火災が発生しなんとか自分は救出することが出来たものの母の方は間に合わなかったという。

世界というのは残酷で幸福と不幸は人生で同じ分だけ味わうものだ。

一生分の幸せを得た後は一生分の不幸が必ず訪れる。

それを今回よく理解出来た。

母さんの死は当日中に報道番組で取り上げられネットでは何故か母への誹謗中傷も流れてきていた。

その殆どは嫉妬からの悪口と思われるほど身勝手なもので母を殺した男にも誹謗中傷を書いていた者たちにも憎しみが湧いた。

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