第3話
スタイルがよく顔立ちが整っていて演技も上手いそんな完璧な母にも苦手なものがある。
本人は苦手とは思っていない。
それは料理だ。
はっきり言って母の料理の腕は絶望的である。
一度おやつとして母が作ったはクッキーを食べたけど人が口にしていいものじゃなかった。
「お、お兄ちゃん、何で止めなかったの?」
料理を作る時の母はそれはもう嬉しそうで楽しそう。
いくらやばい料理でもあんなに楽しそうにされると止められない。
「無理を言うな。あんなに楽しそうにしてるお母さんをどう止めろと」
「うぐっ、確かに。こ、こうなったらゆいお姉ちゃんを」
お母さんの携帯を取ろうとした楓の腕を掴む。
「も、もしかしたら、今回は上手くいくかもしれない」
「そ、そうだよね」
そう思っていた時期もありました。
お母さんの作った見た目だけは美味しそうなオムライスをスプーンですくい口に放り込む。
「っ!?か、辛い、、甘い?苦いっ!」
「おかしいなぁ。何を間違えたんだろう」
寝ていた郁はこのお母さんのご飯を食べずに済んだみたいだ。
「大丈夫、美味い。お母さんの料理は美味い」
「こんな日々がずっと続くといいな」
美味いと暗示をかけながら食べているとお母さんが唐突に呟いた。
その目はどこか遠くを見ている感じがした。
「いきなりどうしたの?お母さん」
「ん〜?ずっと四人で楽しく暮らせたらいいなって話だよ」
「暮らせるよっ!いつか僕もお母さんみたいな演技できるようになって守るからっ!」
「へぇ〜頼もしいね。さすがは私の子」
「お兄ちゃんだけずるいっ。私だってママを守るもんっ!」
「なら私も守る」
いつ起きたのか便乗するように郁がお母さんに抱きついた。
しかしお母さんのそのセリフが怖かった。
本当に目の前から突然いなくなってしまうんじゃないかと。
「お、お母さん」
「なあに?」
「お母さんはいなくならないよね?置いてったりしないよね?」
「いきなりどうしたの?」
「や、やだよ。お母さんがいなくなるなんて」
「いなくなるわけないよ。私にとって三人が一番大事なんだから。家族を守るためなる私はなんだってするよ」
「お母さん」
お母さんの言葉と手の温かさできっと母は目の前からいなくならないと安心した。
そんな気がした。
お母さんのその眼差しからはそう感じたのだ。
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