マイノリティが一人、音を立てずに斃れる


 悪気はなかった。本気じゃなかった。
 そんなつもりはなかった。

 まさか、そんな深刻に受け取るだなんて……


 主人公は「背が低い」男性。
「たったそれだけ?」と思うかもしれない。

 この作品における「まわり」も皆そう思っていた。
 だから深く考えることもなく、彼をからかい、「向いていない」という理由で冷遇し、目を背けた。

 そのひとつひとつが、積み重なれば人を殺せる毒であったとも知らずに。


 マイノリティの活動はネット・コミュニティの影響もあって大きくなりつつある。けれども、それが適切に伝わっているかは疑問であるし、
 何よりも「意識すらされない」マイノリティがいることも事実である。

 諸手を挙げて、彼の行為や理屈に賛同することは出来ない。
 ただ、恐らくは新聞の片隅にすら載らず、静かに忘れ去られていくであろうマイノリティの哀しみは、胸に迫るものがあった。

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