第16話 道はやがて
炭で髪を黒く染めた
一番目立つ葵い髪を何とかして目立たなくさせなくては。
いつもの
でも今は、
「こいつは……いつ目を覚ますんだろうか」
「少しキツイ薬を使ったからね。あんた以上に無理をしそうだったから。でも……こうなると厄介だね」
「いくらガキとはいえ、重みはあるからな」
夕方時刻にもなると、人通りはまばらで
人に見られたくない
「
「あぁ、これくらいなんともねぇ。お前のまじないのおかげだな」
「いや……あたしのまじないは効かなかったんだよ」
最初から分かっていたのだ。天狗ほどの力を持つ者に自分の術など、子どもだましに過ぎないと。それを目の前で見せつけられ、無力さを痛いほど感じていた。
「まだ……礼を言ってなかったな。ありがとよ」
「なんだい、改まって。気持ち悪い」
「ははは」
笑うと腹に堪える。
腹を労りながら歩く
熊の様にガタイがでかく、こんなにも無神経でがさつで、筋肉バカな男、この世にはいない! とまで思っていたのに。
家族を奪われた男が、自責の念のためだけに
でも、救われたのは
らしくない……。
「あたしこそ……すまなかった。巻き込んじまって」
「何しおらしい事を言う。気持ち悪いぞ」
「お互いさまだね」
二人の影が長く伸び、穏やかに時が流れて行く。
日が完全に落ちる前に、早川家の領土から抜けたい。
しばらく行くと足元付近に白い糸の様なものが一本、目に入って来た。それは半透明で光に反射してかろうじて見える、蜘蛛の糸のようなものだ。
プチン。
ふと、今まで隣を歩いていた
「
振り向くと、うつむき立ち止まる
「この先が関所だ。迂回して山を越えよう。ほら、行くぞ」
「
「どうした? 忘れ物か?」
何処まで行ってもバカはバカだ。「あんたは長生きするんだよ」そう言うと
尋常ではない
「来るんじゃないよ」
「な、なんだよ」
「あたしはここまでだ。あんたは気付かなかったかもしれないけどね、ここに奴が仕込んだ結界術がある」
「何だって!?」
慌てて退く
「ここから出れば、あいつは直ぐにでも追っ手を放つわ」
「ちょ、ちょっと待った。俺にも分かるように説明してくれ。俺たちが居ないことくらい、あの男にも分かるだろ? その時点で追っ手が来る。その前に山を越えようって話だろ?」
「あんたは本当にバカだねぇ。あたしが何もせずにここまで来たと思ってるのかい? 今、あの長屋にはあんたと
「残映……」
「鬼頭家の初歩的な術さ。でも、あいつはあたしを信じてなかった」
「
しかし「一緒に行こう!」と、口にする事は出来なかった。
「行っとくれ。あたしは戻って時間を稼ぐ」
「殺られるぞ」
「あいつにあたしは殺せないよ。殺るならあの時に殺ってる。だから心配しないでおくれ。それに……またあんたとは会える気がするからさ。
そう言うと
後ろから名を叫ぶ声が聞こえる。
「
「頼むから、行くんだよ! 時間がないんだ」
「くッそ……」
「何とかするから、あたしを信じな」
「わ、わかった。絶対に会いに来い! 絶対だ」
そして、二人はそれぞれの進むべき道へ踏み出していく。
夢の先に妖(あやかし)は何を見るのか 桔梗 浬 @hareruya0126
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